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いじめの深刻化! 「いじめ防止対策推進法」の内容と抱える課題とは?


「もしわが子がいじめの被害者または加害者になってしまったら…」子どもを持つ親の立場として、一度は考えたことがある保護者の方も多いのではないでしょうか。
いじめを防ぎ、子どもたちを守るため、2013(平成25)年9月に「いじめ防止対策推進法」が施行されました。

しかし、法律で定められたからといって、いじめの問題は後を絶たず、最近ではLINEやSNSなどを使ったいじめも深刻化しています。このため、いじめ防止対策推進法の改正を目指す議員により、2019年4月に試案を巡り大幅な修正意見が専門家や被害者家族から出されるなど、暗礁に乗り上げています。

では「いじめ防止対策推進法」にはどのような課題があるのでしょうか?
そして、もしお子さんがいじめに巻き込まれてしまった時、どう対処すればいいのでしょうか?

「いじめ防止対策推進法」とは

2011年に滋賀県大津市で起きた、痛ましいいじめ自殺事件をきっかけに、「いじめ防止対策推進法」は2013(平成25)年6月に成立し、同年9月に施行されました。
この「いじめ防止対策推進法」では、「いじめ」とは心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)によって心身の苦痛を感じているものと定義しており、「児童等は、いじめを行ってはならない」と明確に記載されています。

この法律によって、各地域や学校で、いじめ防止等のための「基本方針」が定められ、全ての学校がいじめ対策の「組織」を置く義務があることが明確化されました。そして、いじめの防止から発見・対応に至るまで、この組織が中心となって取り組みが行われるとされています。

いじめ防止対策推進法には、社会・地域全体でいじめの問題に向き合い、いじめを防いでいくための理念や体制が定められているのです。

いじめ防止対策推進法の「課題」

しかし、社会総がかりでいじめを防ぐために施行された「いじめ防止対策推進法」ですが、まだまだ課題が多いのも事実で、だからこそ実効性のある改正が求められています。
現行のいじめ防止対策推進法においては、 たとえば、「心身の苦痛を感じたと言われれば、すべていじめになってしまう」「定義が広すぎて、いじめに対する共通認識が持てない」など、定義の解釈があいまいになっているという問題点が挙げられています。

次に、一見仲がよさそうに見え、加害者・被害者の関係性がわかりにくいケースや、からかいなどを受けている本人が「大丈夫」と答えたために、苦痛を受けていると判断できないケースなど、「いじめ」の判断や対応が難しいこともあります。

いじめの認知件数については、都道府県間で格差は少なくなってきていますが、学校に設置が義務づけられているいじめ対策の組織や、教育委員会が設置した組織についても、形骸化していないかという懸念があるようです。

「いじめ防止対策推進法」が定められたからといって、いじめ問題は簡単に解決するものではなく、施行から6年が経とうとしている現在でも、いじめの認知件数は文部科学省の調査によると、2017年度小中高などで41万件を超えています。

特に最近のいじめは表から見えにくく、深刻化しやすいという特徴があります。いじめ防止対策推進法では「インターネットを通じで行われるものを含む」と定めていますが、実際問題として、SNS上での仲間外れや無視、中傷、嘘の拡散など、インターネットやSNSを使ったいじめは従来のいじめに比べ、表からは気づきにくいものとなっています。
国立教育政策研究所生徒指導進路指導センターによるいじめ追跡調査では、小中生の9年間のいじめ追跡調査結果が報告されており、仲間はずれ・無視・陰口のいずれかをされた経験がある子どももした経験がある子どもも9割いるということです。つまり誰でも被害者にも加害者にもなりうる可能性があると言えます。

もしもわが子が巻き込まれたら、まずは学校に相談を

もしも大切なお子さんがいじめの被害を受けているとわかった時、親としてどのような対応ができるでしょうか。
もし、保護者の方がいじめに気づいた場合は、「必ずわが子を助ける」という決意を持って、まずは学校に相談しましょう。

担任の先生だけでなく、学校長も含め、学校全体の問題として解決に取り組んでもらえるよう、勇気を持って対応を求めていく必要があります。ただ、冷静さを欠いた状態では話が進めにくい状況もありますので、必要であれば文章を残すことや第三者に入ってもらうなど、学校と協力体制を築くことを意識しましょう。

保護者として対応に悩む場合、文部科学省や法務省にフリーダイヤルで相談できます。また、自治体によっては保護者向けの相談電話を設けていることもありますし、保護者の方もスクールカウンセラーに相談することができますから、専門機関に相談しながら対応策を考えていきましょう。

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SOSを出せる方法はたくさんある

まずは日ごろから「万が一いじめに合ったら、すぐに親へ言うように」とお子さんと話し合っておくことが最優先ですが、親に心配をかけたくない気持ちから、いじめられていることを誰にも相談できないでいる子もいます。

親や先生に言いづらい可能性も考えて、あらかじめ「SOSを出せる方法はいろいろあること」も伝えておくとよいでしょう。
たとえば、文部科学省では「24時間子どもSOSダイヤル」を設け、都道府県および指定都市の教育委員会が夜間・休日を含め24時間対応可能な相談体制を整備しています。

また、法務省の人権擁護機関では、学校における「いじめ」などの問題に対する活動として、全国の小・中学校の生徒に「子どもの人権SOSミニレター」を配布しています。
「子どもの人権SOSミニレター」に相談したいことを書いてポストに投函すると、もよりの法務局・地方法務局に届く仕組みです。

さらに、全国の小学校・中学校においてスクールカウンセラーの配置が進められています。保護者や担任の先生に相談しにくいことでも、スクールカウンセラーに相談することが可能です。

気づきにくいSNSのいじめには保護者の方も要注意

しかし、保護者の方がなかなか気づけないいじめが多くなっているのも実情です。たとえば最近増えているSNSを使ったいじめでは、直接的な暴力を受けたり、物を傷つけられたりするなど、周囲が気づける目に見えるサインが少なく、発覚が遅れることも考えられます。

最近のいじめは、保護者の方も特に意識してお子さんの様子を見守っていくことが大切です。たとえば、お子さんの日々の行動や態度のなかにも、いじめのサインを示すものが隠れている可能性があります。「いじめのサイン発見シート」などを元に、サインを見逃さないように注意してあげてください。
文部科学省 「いじめのサイン発見シート」

また、予防策として、スマートフォンの使い方やSNSのマナー、モラルについて、よく話し合っておくと良いでしょう。 たとえば、同じ内容の言葉であっても、対面で言うのと、SNSなど文字だけで伝えるのでは、受け手の受け取り方によって誤解を生む可能性があるなど、無用なトラブルを避けるために知っておくことが重要です。

いじめは誰にでも起こりうる問題です。インターネットやSNSを通したいじめなど、保護者世代には経験のないいじめも深刻化しています。「いじめ防止対策推進法」が子どもたちをいじめから守ってくれる部分もありますが、完全にいじめをなくすことは難しい状況です。家庭でもお子さんの様子を見守り、もしもの際には的確な対応ができることが非常に大切です。特に、SNSを使ったいじめは発見しづらいので、あらかじめスマートフォンの使い方やSNSのマナー、モラルについては、お子さんとよく話し合っておく必要がありますね。

(執筆年月:2019年4月)