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2020年の教育改革「英語」はどう変わる? 英語学習と新大学入試の対策 ~進路指導センターに最新情報を聞いた!~

英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入について、2019年11月1日、文部科学省より延期の発表がありました。
本記事については記事掲載時点の情報である旨をご留意いただけますようお願い申し上げます。

2020年の教育改革の中でも最も大きな変化があるとされる「英語」。高校をはじめとする学校での授業はどう変わるのか。新しい大学入試に向けての英語対策はどうすればよいのか。「英語改革」の変化と対策のポイントを、教育の最新情報に詳しい東京個別指導学院・進路指導センターの寺田拓司(ひろし)さん、宮田真奈美さんに伺いました。
(※2019年10月時点での情報です。英語の大学入試に関しては、今後も変更がある可能性があります。)

教育改革で何が変わる? 英語の変化のポイント


――2020年の教育改革では、英語が大きく変わると話題になっていますが、どのような変化があるのか教えてください。
宮田さん:今までの大学入試センター試験に代わり、2021年度入試からは「大学入学共通テスト」が始まります。センター試験の英語では、主にリーディングとリスニングの2技能が問われていました。新しい入試制度ではライティングとスピーキングが加わり、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能が問われる方向です。4技能をはかるため、大学入試センターが作成する英語のテスト(読む・聞くの2技能)に加えて、既存の英語資格・検定試験の活用が決定しています。

――4技能をはかるには、大学入学共通テストと英語の資格・検定試験の2つが必要だということですね。2025年度(2025年入学者)以降は外部の英語資格・検定試験に統一される予定ということですが。
宮田さん:はい。2025年度以降は大学入学共通テストの英語は廃止され、外部の資格・検定試験に一本化される予定です。ただ、2020年度から2024年度までは、大学入試センターが大学入学共通テストの科目の1つとして英語2技能のテストを作成します。そして外部の4技能資格・検定試験も活用されます。
このように2024年度までは、基本的に国公立大学を受験する場合、共通テストの英語と、外部の英語資格・検定試験の両方が課されることになるんです。

――新学習指導要領での、小学校、中学校、高校の英語についても、変更のポイントを教えてください。
寺田さん:まず、中学校の英語の授業は基本的に英語で行うことが基本方針となります。
また、小学校3~4年生では「外国語活動」として英語を学びます。これは年間に35時間、週に1コマ程度ですね。また小学校5~6年生では「外国語」が教科化されて、年間70時間、週に2コマ程度英語を勉強することになります。
また都立高校では、2019年度の新中学1年生が受験することになる2022年度の高校入試(2022年入学)からスピーキング入試が始まります。今後は、小学校で全員が英語を習いますので、数年後には、国立中学校や都立の中高一貫校などの入試でも、英語が課される可能性が非常に高いです。

――大学や高校の入試の英語が変わるだけでなく、中学受験にも影響が出てくるんですね。
寺田さん:実際に2019年度に開校した、さいたま市立大宮国際中等教育学校という公立中高一貫校では、英語を使った集団活動が選抜に使われました。また、首都圏で英語入試を実施した中学校は2014年度には15校だったのが、2019年度には私立を中心に125校(※1)となり約8倍にも増加しています。入試に英語を活用する中学校はこれからますます増えていくでしょう。

これからの時代に求められる「英語力」とは?


――高校の英語では「英語コミュニケーション」と「論理・表現」という科目が新設されます。今後、学校での英語授業はどのように変わるのでしょうか?
宮田さん:従来は「コミュニケーション英語」というリーディングを中心とした科目と、「英語表現」という文法を中心とした科目でした。この違いはそのまま継続されると考えられます。

寺田さん:新しく用意された小学校の教材を見ると、コミュニケーションにウエイトを置いた内容になっているように感じます。たとえば、ペアになって「春休みで印象に残ったことを話し合いましょう」とテーマを設けて会話をするような感じです。
高校では、「エッセイを書く」「英語の長文を書く」「英語でディベートをする」「英語でスピーチをする」といったアウトプットが、今まで以上に重視されると考えられます。保護者の方が経験した英語の授業とは、イメージが大きく変わるでしょう。

――では、英語教育改革によって、これからはどんな英語の能力が求められるようになるのでしょうか。
宮田さん:大学入試で活用される英語資格・検定試験の内容に関しては、今までの大学入試センター試験のような「異なる発音はどれでしょう」といった問題や、「( )の中に入る文法として正しい単語を選びなさい」というような問題はなくなると予想されます。発音・アクセント問題や文法問題は減り、文章を読解して必要な情報を取捨選択して回答していく、文字通り「読む」力が問われます。
そしてスピーキングやライティングでは、ある事象に対して自分の意見を英語で答える問題が重視されます。たとえば、「あなたは日本の社会において、男女が平等に働けていると思いますか? 意見を述べてください」という問いです。こうした問題に回答するためには、自分の意見を論理的に伝える力が、新たに必要になります。

寺田さん:テスト前の一週間で丸暗記をしたり、一夜漬けをしたりということは、もう通用しなくなるでしょう。

――大学入学共通テストを受験することになるのは、2019年度の新高校2年生からということになりますが、ずばり英語改革の影響が最も大きいのは何年生でしょうか?
寺田さん:個人的に一番影響が大きいと思うのは、2019年度の新中学1年生からです。なぜなら、都立高校の入試にスピーキングが導入される初年度にあたるからです。また、大学入試における英語が資格・検定試験だけで行われる初年度にもあたります。こう考えると、一番大変な学年なのではないかと思います。

大学入試における英語資格検定試験の活用について


――新しい大学入試では、英語の対策がとくに重要と言われますが、その理由を教えてください。
寺田さん:2021年度からの大学入試では、外部の英語資格・検定試験が今までよりも積極的に活用されるというお話をしました。資格・検定試験の実施団体が大学入試センターに生徒の成績を送付し、大学入試センターから各大学にこの成績が提供されるシステムを、英語成績提供システムといいます。大学入試に使えるのは、原則として高校3年生の4月から12月(英検は4月から11月)の2回までの成績となります。この英語成績提供システムを、ほぼすべての国公立大学が使用します。

今までは、高校3年生の1月に行われるセンター試験までに主にリーディングとリスニング少しを仕上げておけばよかった。ところが、これからは高校3年生の4月から12月までの2回の資格・検定試験が本番ということになります。つまり、高校2年生のうちに英語を仕上げておく必要があります。理系でも文系でも英語が必要ですから、英語の前倒し学習を意識することがとても重要です。

さらに大学入学共通テストに先がけて文部科学省が行った、試行調査問題(プレテスト)の配点を英検換算で見てみると、リーディングで出題された問題のうち6割が英検2級レべル、それよりも易しい問題は4割でした。つまり、大学入学共通テストで60点以上をとるには、英検2級レベルの力が必要になってくる。高校3年生で英検準2級レベルでは、6割出題されている2級レベルの問題が解けない可能性が高いということです。
一方で、現在の高校3年生の英検合格率は準2級が3割、中学生相当の3級~5級が7割というデータもあります。【※出典:平成27年度英語力調査結果(高校3年生) 文部科学省】このデータには、大学を受験しない人も含まれますが、今までの感覚のままでは、かなり厳しい状況だと言えます。ですから、2019年度の高校2年生からは英語の学習についてより一層努力が必要になるでしょう。

――英語資格・検定試験は複数選定されたそうですが、種類やそれぞれの検定の傾向を教えてください。
寺田さん:英語成績提供システムに参加する予定の資格・検定試験には、ケンブリッジ英語検定、TOEFL(トフル)、IELTS(アイエルツ)、TOEIC(トーイック)、GTEC(ジーテック)、TEAP(ティープ)、新型の実用英語技能検定(英検)などがあります(※2)。

宮田さん:これらの資格・検定試験は、出題される英文のテーマによって大きく3つに分けられます。1つはジェネラルといって、現在の入試で出題されるような、地球温暖化などの一般的なテーマのものを指します。もう1つはアカデミックです。海外の大学に留学したときに出会う場面を想定して、食堂で同級生と会話する場面や、講義を聞いてレポートを提出したり、同級生とディスカッションをしたりする場面が例文として扱われます。最後はビジネスです。TOEICはビジネスに分類されるというのは有名ですけれども、社会に出て取引先と商談をしたり、メールのやりとりをしたりする場面が想定されています。
この中で日本の高校生が取り組みやすいのは、ジェネラルだと思います。高校では一番多く対策されているのが英検、次いでGTECです。この2つはどちらもジェネラルになります。

寺田さん:2019年度入試では一般入試でも、AO・推薦入試でも、英検が最も採択されているため、今後も英検を使って大学入試にのぞむ生徒さんの割合が多くなると思われます。

――英語資格・検定試験の成績は、大学入試でどのような形で使われるのでしょうか。
寺田さん:大学入試での英語資格・検定試験の活用法として多い形式には、「出願資格」「みなし得点」「加点」などがあります。

「出願資格」…基準となるスコアを満たす者が出願できる
例:英検2級以上が出願できる

「みなし得点」…スコアに応じてみなし得点が設定される
例:英検準1級以上で英語のテストを満点扱い、TOEIC○点以上で英語の試験は免除

「加点」…スコアに応じて得点が加算される
例:TEAP○点以上で30点プラス

ほかに、出願時に提出したスコアが合否判定に使われる「書類審査」や、スコアの提出が義務付けられそのまま得点になる「試験の代替」などもあります。
主だった国公立大学での活用方法を見てみると、東京大学、京都大学、一橋大学、東京工業大学などは、「CEFR(セファール)のA2以上」を出願資格としている大学が多く見られます。CEFRとは欧米を中心に広く使われている語学のコミュニケーション能力を指す国際的な基準で、A2は英検の準2級レベルになります(※3)。つまり英検であれば準2級以上のレベルを証明できないと、出願すらできません。
一方で首都大学東京は、一次試験では大学入学共通テストの英語を課し、二次試験では資格・検定試験の成績を利用することで、個別選抜では英語の試験を廃止するという発表をしています。私立大学では、資格・検定試験の活用法がより複雑になります。
また、武蔵大学の一部の入試では、英語の資格・検定試験の成績の提出は義務付けていますが、基準点は設けず、加点も行わないとしています。つまり英語の資格・検定試験を受けることが大切だという姿勢です。

――少し聞いただけでも大学によってかなり違いがあって複雑ですね。早めに志望校を決めないと、資格・検定試験を受ける計画が立てにくくなりそうです。
寺田さん:その通りです。さらに例を挙げると、上智大学の一般選抜では3つの入試方式が用意されることになりましたが、TEAPを受けていると3回とも挑戦できます。TEAP以外の資格・検定試験では、チャンスは2回になってしまいます。また、資格検定試験を受けていなければ、出願もできなくなります。
国公立大学、私立大学、またそれぞれの学部や学科によって違いがありますので、進路指導もとても複雑になります。早めに志望校を決めたほうが有利に受験を進められるということが言えます。そして、学校だけでなく塾なども利用して、より広く情報収集をする必要が出てくるでしょう。

教育改革に合わせた英語の入試対策と勉強法


――今回の英語改革によって、英語の勉強の仕方も変える必要があると思います。学校の授業のための勉強と資格・検定試験のための勉強では、違いはありますか?
宮田さん:学校の教科書に載っている英語の長文を読むにしろ、どの資格・検定試験を受けるにしろ、必要な力の土台となる部分は変わりません。英文を読む力というのが、共通して求められるものです。

寺田さん:4技能を勉強するという部分も共通していますね。たとえば、文章はすらすら読めるけれど、リスニングが苦手という人がいれば、当然、リスニングの対策が先決になります。ある程度、聞き取れるようになったら、資格・検定試験別の傾向に合わせた勉強をしたほうがよい。このように4技能の基礎を作ったうえで、資格・検定試験別の対策を上乗せしていくイメージですね。

――東京個別指導学院では大学入試の英語改革に関して、どのような対策を立てているのでしょうか?
宮田さん:まずリーディングに関しては、Back to Schoolという学習法を提案しています。学校の教科書を学習する際に構文(英文の構造理解)の学習も行うことで、学校の勉強を入試対策につなげる学習法です。この学習を行うことで、読解スピードを上げられます。ライティングに関しては、自分の意見を上手くまとめられずにだらだらと書いてしまう生徒さんが多いので、論理的にまとめるためのフォーマットを作成しています。こうしたツールをそれぞれの英語資格・検定試験ごとに作成していますので、資格・検定対策として自分の意見を論理的に書くトレーニングをすることができます。

また、東京個別指導学院での学習内容や、家庭学習での計画の立て方などについての講師用のマニュアルも、英語資格・検定ごとに作成しています。加えて、複雑な英語の入試対策の最新情報を共有するための講師研修もさまざまな教室やエリアで行っています。さらに進路指導センターでは、各教室の教室長向けの解説動画を作成して時間のロスなく、最新の状況を得るための工夫もしています。こうした取り組みを通して、教室と講師の質の向上に努めています。

寺田さん:スピーキングに関しては、イングリッシュスピーキングトレーニング(※下記参照)というプログラムを全教室に配置しています。これでインターネットを利用して、英語に熟練したフィリピン人の先生とやりとりをすることができます。このシステムは教室ではなく、家庭でも利用することができますから、みんなの前で発音するのは恥ずかしいという生徒さんにもおすすめしたいですね。

(※)イングリッシュスピーキングトレーニング(English Speaking Training)
(株)ベネッセコーポレーションが提供するサービス。

――ライティングやスピーキングは1人で学習するのが難しいのではないかと思いますが、どのように勉強していったらよいでしょうか?
宮田さん:4技能、学校の授業、資格・検定試験のどれかに関わらず、すべての基本となる必要最低限の語彙力は身につけておく必要があります。今までは、リーディング重視だったので、発音がわからなくてもスペルさえ間違えなければ、あるいは読んで理解できれば、ある程度点数がとれました。
しかし、これからは英語を聞いて意味を理解する、自分で発音するという部分も重要になります。ですから、単語学習も今までのように書くだけでなく、発音を聞いて、自分で発音して覚えていく作業が必須になります。今はスマホで英単語の発音を聞けるアプリなどもありますので、自宅学習でもしっかりと取り組んでほしいと思います。

寺田さん:日本に来た外国人が、単語をノートに何度も書いても日本語を話せるようにはなりませんよね。耳から聞いて、口に出していくことで、身につける。その過程でつづりもマスターしていくというのが自然な流れではないでしょうか。そうした語学学習の本来の姿に近づいていくのではないかと思います。

――最後に、これから新しい大学入試を受けることになる受験生に向けて、今これだけはやっておいたほうがよいというポイントや、メッセージを教えてください。
寺田さん:入試制度が変わるということで、不安な点もたくさんあるでしょう。他の学年に比べて、損をしたと思う人もいるかもしれません。でも、大学に入って、社会に出て、どちらの英語のほうがこれからの時代「使える英語」でしょうか。みなさんは、新しい大学入試に向けた勉強を契機に、使える英語をいち早く学び始めることができる幸運な世代です。大学はどんな力のある学生を求めているのか、どういう入試になるのかということにも広くアンテナをはって、ぜひ、前向きに勉強に取り組んでください。

(※1) 
2019年首都圏中学入試での「英語(選択)入試」の実施校一覧(推薦入試も含む125校) 首都圏模試センター調べ【2019年1月24日現在】

(※2)
参加要件を満たしていることが確認された資格・検定試験の概要

(※3)
各資格・検定試験とCFERの対照表 文部科学省(平成30年3月)

「新大学入試の対策、何から始めたらいいの?」については、こちらのページもご覧ください

【プロフィール】
寺田拓司(てらだ ひろし)

教育業界に携わり30余年。何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。現在は東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。
【てら先生】コラム 過去記事一覧|PICK UP|株式会社東京個別指導学院(TKG)
【教育改革】コラム 過去記事一覧|PICK UP|株式会社東京個別指導学院(TKG)
 

宮田真奈美(みやた まなみ)

大学で教員免許を取得し、講師歴12年。現在は東京個別指導学院進路指導センターにて、英語を中心に指導法の開発・教室現場への発信を行っている。