高校無償化制度とは?

高校無償化制度は、授業料が無償化される制度

高校無償化制度とは、正式名称「高等学校等就学支援金制度」といい、ご家庭の経済状況に応じて、国公私立問わず高等学校等の授業料を支援してくれる制度です。

高校無償化がスタートしたのは、平成22年(2010年)の4月1日。公立高校の授業料を無償化し、私立高校等には高等学校等就学支援金を支給することから始まりました。

今日の高等学校等進学率は、98.7%(2023年度、通信制を含む)に達しています。家庭の経済状況にかかわらず、すべての高校生等が安心して学習に打ち込むための制度になっています。

 

よく聞く「実質無償化」はどういう意味? 

高校無償化制度は、授業料の「実質無料化」といわれることがあります。

この「実質」の意味を知るために、高校無償化制度の授業料が無償化される流れを見てみましょう。

※文部科学省「高等学校等就学支援金制度」を元に東京個別指導学院が作成

 

まず、高等学校等の生徒が、学校に申請書と課税証明書を提出し、学校が申請書と課税証明書を都道府県に提出します。それらの書類をもとに、国は都道府県に就学支援金の費用を都道府県に交付。都道府県は交付された就学支援金を学校に支給し、学校は高等学校等の生徒に代わって就学支援金を受け取り、授業料に充てるという流れです。

このように、高校無償化は、授業料が0円になるわけではなく、国からの就学支援金で、高等学校等の授業料の一部または全部を相殺しています。国の支援金によって、ご家庭からの授業料の出費が実質ゼロになることもあるため、「実質無償化」という言葉が使われているのです。

ただ、すべての生徒の授業料が実質無償化されるわけではありません。就学支援金の受給金額は、世帯年収によって異なるため注意が必要です。制度の適用条件については、次の見出しで詳しくご紹介します。

 

高校無償化制度が適用される条件とは?

高校無償化制度は、前提条件として日本国内に住所を有する方が対象です。加えて、受給のためにはさまざまな条件を満たす必要があります。所得制限や受給額などについて詳しく見てみましょう。

制度対象となる学校の種類

制度の対象となるのは高校だけではありません。高校無償化制度が適用される学校の種類は以下の通りで、就学支援金の金額は高等学校の種類によって異なります。

  • 国公私立の高等学校(全日制、定時制、通信制)
  • 中等教育学校後期課程
  • 特別支援学校の高等部
  • 高等専門学校(1~3学年)
  • 専修学校(高等課程)
  • 専修学校の一般課程や各種学校のうち国家資格者養成課程に指定されている学校
  • 各種学校のうち一定の要件を満たす外国人学校

 

上記の学校を総じて「高等学校等」と呼ばれています。

ただし、上記の高等学校等に在学する生徒であっても、以下の方は対象にはなりません。

  • 高校等をすでに卒業した生徒
  • 3年(定時制・通信制は4年)を超えて在学している生徒
  • 専攻科、別科の生徒や、科目履修生、聴講生

 

 

高校無償化制度は、2025年度より公立高校の所得制限が撤廃され、公立高校に通うお子さまを持つご家庭には、11万8,800円(年額)が支給されるようになりました。しかし、私立高校は世帯収入によって支給額が異なります。支給金額を決定する条件は、次の見出しで詳しく見てみましょう。

私立高校は世帯年収によって支給額が違う! 高校無償化制度の判定基準の計算方法と支給額

前述した通り、私立高校に通う場合、世帯収入によって支給額が異なり、高校無償化制度が適用となるかどうかは、以下の計算式を用いて判定します。

【計算式】

市町村民税の課税標準額×6% - 市町村民税の調整控除の額

(※ 政令指定都市の場合は、「調整控除の額」に3/4を乗じて計算)

計算式にある「市町村民税の課税標準額」とは、市町村民税(住民税)の計算の基礎となる金額です。また、「市町村民税の調整控除」とは、扶養控除や配偶者控除といった人的控除の差を埋めるために、住民税から一定額を差し引く措置を指します。

「市町村民税の課税標準額」と「市町村民税の調整控除の額」は、マイナポータルにある「わたしの情報」から確認可能です。

そして、計算式による算出額が15万4,500円「未満」か「以上」かによって、支給額が以下のように異なります。

  • 15万4,500円未満:支給上限額39万6,000円(年額)
  • 15万4,500円以上:支給上限額11万8,800円(年額)

 

判定基準となる計算を行うことで、私立高校に通った場合の支給額を知ることが可能です。ただ、調べることが多く複雑な計算なので、「計算する時間が取れない……」という方は、次の見出しの「制度が適用される年収目安」を参考にしてみてください。

 

制度が適用される世帯年収の目安とモデルケース

所得制限には、ご家庭のお子さま(扶養控除対象者)の数と共働き家庭・片働き家庭(両親のうち一方が働いている家庭)といった働き方によって、世帯年収の目安が異なります。詳しい世帯年収の目安は、以下の表を参考にしてください。

※文部科学省 高校生等への修学支援「所得基準に相当する目安年収(例)」をもとに東京個別指導学院が作成
※全日制の場合

 

※文部科学省 高校生等への修学支援「所得基準に相当する目安年収(例)」をもとに東京個別指導学院が作成
※全日制の場合

たとえば、両親・高校生・中学生の4人家族で片働き家庭の場合、世帯年収が約590万円以上になるか未満になるかで支給額が異なります。

ここで、世帯年収と家族構成のモデルケースごとに、就学支援金がいくらになるか見てみましょう。

 

ケース1)

働き方:共働き
子の数:2人(高校生・中学生以下)
高校の種類:公立高校全日制
世帯年収:1,000万円

この場合、公立高校に通っているため、世帯年収にかかわらず支給上限額11万8,000円(年額)が支給されます。

 

ケース2)
働き方:片働き
子の数:1人(高校生)
高校の種類:私立高校全日制
世帯年収:950万円

この場合、世帯年収が約590万円以上になるので、支給上限額11万8,000円(年額)が支給されます。

 

ケース3)
働き方:共働き
子の数:2人(高校生・高校生)
高校の種類:私立高校全日制
世帯年収:700万円

この場合、世帯年収が約720万円未満となるため、私立高校の支給上限額39万6,000円(年額)が支給されます。

 

ご家庭の家族構成から世帯年収の目安を確かめ、支給額がいくらになるか、確認してみてください。なお、2026年度には私立高校でも所得制限の撤廃や支給額上限の引き上げが検討されており、支援の拡充が期待できます。

 

さまざま高校の支給額を比べてみよう

前述した通り、学校の種類によって就学支援金の支給額は異なります。ここでは「全日制」「定時制」「通信制」の3種類の支給額を見てみましょう。

それぞれの高校の特徴は以下の通りです。

全日制 : 毎日,平日の昼間に授業を行う
定時制 : 夜間定時制・昼間二部定時制など、限られた時間の中で授業を行う
通信制 : 通信手段を用いて、自学自習し、指導を受け、毎日学校に通わなくてよい

 

公立と私立に分けて、2025年2月時点のそれぞれの学校の種類ごとの支給額を見てみましょう。

公立高校の場合の支給額

公立高校の「全日制」「定時制」「通信制」の支給額は表の通りです。

全日制と比べて定時制や通信制は授業料が低く設定されているため、支給限度額も低くなっています。

※文部科学省 高校生等への修学支援「支給期間 ・ 支給限度額一覧」をもとに東京個別指導学院が作成

 

私立高校の場合の支給額

私立高校の「全日制」「定時制」「通信制」の支給額は表の通りです。

公立高校と比べて、授業料が高く設定されているため、支給限度額が高くなっています。また、私立高校の加算額もそれぞれ設定されています。

※文部科学省 高校生等への修学支援「支給期間 ・ 支給限度額一覧」をもとに東京個別指導学院が作成
※1高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行令第3条第5号および高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第7条に基づいて計算した支給限度額に3分の10を乗じた額
※2 高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行令第3条第5号および高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第7条に基づいて計算した支給限度額に2分の5を乗じた額

 

お住まいの支援制度をチェック! 自治体独自の支援も

国の支援とは別に、都道府県などの各自治体でも、高校の学費を支援する制度があります。ここでは、【東京都】【大阪府】【千葉県】の自治体の例をご紹介します。

 

【東京都】高等学校等就学支援事業

対象者 私立高校等に在学する都内在住の生徒および保護者等
対象校 都内・都外の私立高校等

2024年度より、私立高校等でも所得制限を撤廃した高等学校等の授業料の無償化制度が開始しました。

前述した通り、現在の国の制度では家族構成と世帯年収に応じて私立高校等の支給額が異なります。しかし、東京都では国の制度にプラスして支援を行うことで、どのご家庭でも授業料が無償化されるようになりました。

私立高校等では、所得制限なしで都内私立高校の平均授業料に相当する最大49万円までが支援されます。49万円よりも高額な授業料の学校の場合、差額はご家庭が負担します。49万円より安価な授業料の学校の場合は、49万円との差額がご家庭に支払われることはありません。

保護者の方や生徒が都内在住であれば、都外の私立高校の授業料も支援の対象です。国の「高等学校等就学支援金制度」と東京都の「高校等の授業料支援」の両方を合わせて成り立っている制度なので、申し込みは国と東京都の両方へ行う必要があります。

2025年度以降の申請スケジュールはまだ発表されていませんが、予定としては6月下旬~7月に申し込みが開始される見込みです。前年通りであれば、スマホやパソコンから申請受付サイトから申し込みができます。

 

【大阪府】私立高等学校等授業料支援補助金制度

対象者 大阪府内に住所を有する生徒および保護者
対象校 大阪府教育長が指定する私立高校生等就学支援推進校

こちらも、所得や子どもの人数にかかわらず、どのご家庭でも私立高校の授業料を無償化する支援制度です。2024年度の高校3年生から段階的に適用され、2026年度には高校の全学年で授業料が無償化されます。

大阪府が指定する就学支援推進校に通う生徒が対象で、支給上限額は63万円と国の支給額を大きく上回ります。

東京都と同様に、国の「高等学校等就学支援金制度」に大阪府が支援を上乗せする形なので、国と大阪府の両方の申請が必要です。申し込みは、進学先の高校等を通じて行うため、入学前の手続きの必要はありません。

 

【千葉県】私立高等学校等授業料減免制度(令和6年度)

※ 「市町村民税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除の額」から算出された額

 

千葉県の私立高等学校等授業料減免制度は、千葉県内私立高校等の授業料の負担を軽減してくれる補助金制度です。国の高校無償化制度に千葉県の補助金を上乗せすることで、より手厚い支援が受けられます。

減免される金額は、上記の1号・2号に該当するご家庭では、月額授業料の全額から就学支援金を除いた差額、3号から5号に該当するご家庭は、月額授業料の3分の2(上限20,800円)から就学支援金を除いた差額です。

申し込みは進学先の学校を通じて行います。支給方法の詳細は学校によって異なるため、入学時に確認しておくと安心でしょう。

各自治体の支援制度は2025年3月時点で発表されている令和6年度の情報です。令和7年度以降の支援情報は、各自治体のホームページで確認してくださいね。

 

高校無償化制度に必要な書類と申請方法を詳しく! 

高校無償化制度の適用には申請が必要です。慌てないように、申請時期・申請方法・申請に必要な書類などを確認しておきましょう。

 

申請時期はいつ? 

高校無償化制度の申請は、原則として入学時の4月中に行います。入学時からの支給を希望する場合、4月を過ぎてしまうと、4月分が受給できなくなる可能性があるため注意が必要です。

 

申請に必要なものは? 

申請に必要なものは

  • 受給資格認定申請書(学校を通じて配布)
  • 保護者の方のマイナンバー(個人番号)がわかる書類

 

の2点です。

マイナンバーがわかる書類には、マイナンバーカードの写しやマイナンバーが記載された住民票の写しなどがあります。前述した通り、申請は4月に行うため、マイナンバーがわかる書類は早めに準備しておくと安心です。

 

申請方法は? 

申請方法は「オンライン」と「紙」の2種類があります。

オンライン申請は、「高等学校等就学支援金オンライン申請システム e-Shien」を活用します。学校からオンライン申請で使用する「ログインID通知書」を受け取り、受給資格認定の申請を行いましょう。

紙の場合は、学校から配布される受給資格認定申請書を記入し、マイナンバーがわかる書類とともに提出します。

申請に必要な書類や申請書の提出方法・提出期限などは、自治体や各学校で異なるため、学校からの案内に沿って行ってくださいね。

 

就学支援金の受け取り方は?

「支援金」と聞くと、お金が振り込まれるイメージを持つかもしれませんが、多くの場合で就学支援金がご家庭の銀行口座に入金されることはありません。

高校無償化制度では、国からの就学支援金を都道府県や学校が、生徒の代わりに受け取り、そのまま授業料に充てます。もし、就学支援金よりも授業料の方が高い場合など、ご家庭で差額を支払う必要があるケースもあることを覚えておいてください。

 

高校無償化制度の活用でチャンスを広げよう

国が行う高校無償化制度(高等学校等就学支援金制度)は、高等学校等の授業料を支援してくれる制度です。2025年度から公立高校での所得制限が撤廃され、私立高校では世帯年収事に支援額が異なります。また、2026年度より支援拡充に向けて検討されているため、今後も高校無償化制度から目が離せません。国の高校無償化制度に加えて、独自の高校支援制度を行っている自治体もあるので、一度お住まいの自治体の支援策を見てみてください。

高校無償化制度を活用することは、経済的な理由で志望校を諦めていたご家庭にとって、志望校の幅を広げるチャンスとなるでしょう。東京個別指導学院・関西個別指導学院では、選んだ志望校に合格するための学習プランを、お子さまに合わせて作成できます。無料の学習相談に一度行ってみてはいかがでしょう。

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