勉強法

「整理整頓」で決断力も高まる⁉ 親子で学びたい、散らからない子ども部屋の作り方 ~整理収納アドバイザー・伊藤朋美さんインタビュー~



「整理整頓は判断力を育てることにつながります」。
そう話してくれたのは、整理収納アドバイザーの伊藤朋美さん。散らかさないための整理整頓のコツから、お子さんに整理整頓を身につけてほしい理由まで、親子で学びたい片づけにまつわるあれこれをお聞きしました。

お子さんの学習スペースや子ども部屋がすぐ散らかってしまうとお悩みの保護者の方は、ぜひ参考にしてください。

「整理整頓」にはメリットがいっぱい! すっきり片づくと親子関係にもよい影響が



――伊藤さんはインテリアコーディネーターや整理収納アドバイザーとして、個人のお宅の整理収納片づけサービスから、企業向けのセミナーまで幅広く活動されているそうですね。
中高生のお子さんを持つ保護者の方には、お子さんの学用品や子ども部屋が片づかないとお悩みの方も多いのでしょうか?

はい。片づけに悩んでいる保護者の方はとても多いですね。実際に私が片づけにうかがったお宅でも、学用品が散らかっていたり、洋服があふれていたりと、お子さんの持ち物の収納に悩んでいるご家庭が非常に多いです。

――中高生ともなると身の回りのモノがどんどん増えて片づけにくいということもありそうですね。最初に、「片づけが苦手」「整理整頓ができない」という人には、どんな共通点があるのか教えていいただけますか?

片づけができない人は、自分にとって必要なものと不必要なものが混ざってしまっていることが特徴的です。持ち物の量が多く、自分が管理できる量を超えてしまっているということも共通して言えます。

中高生に限らず大人でも言えるのですが、自分にとって本当に必要なものが判断できていないので、物だけでなく、考え方や行動が整理できず、ムダな動きをくり返して、悪循環になってしまっている人が非常に多いです。

――片づけられない人は、ムダが多いというのはわかる気がします。では、片づけられるようになることで、どんなメリットが出てくるのでしょうか?

「時間的」「経済的」「精神的」と3つのメリットが出てきます。3つのメリットについて詳しくお話する前に、まず、みなさんに知ってもらいたいのは「整理整頓」という言葉の定義です。
四字熟語のように「整理整頓」と言いますが、改めて調べてみると、そもそも「整理」と「整頓」という言葉は少し意味が違うんです。

「整理」も「整頓」も「整える」という意味がありますが、「整理」には「不必要なものを取り除く」という意味が加わるんですね。そして「整頓整理」とは言いません。
つまり、まず整理をしないと整頓はできないということになります。

――なるほど。整理整頓ができるようになるためには、まず不必要なものを取り除くことから始めたほうがいいということですね!

そうです! そして整理整頓をすることで得られる「時間的」「経済的」「精神的」の3つのメリットのお話しに戻りますが、まず「時間的メリット」。
家の中が整理されていると、必要な物がすぐ出てこなくて探すという、ムダな時間をカットできます。

次に「経済的メリット」。本当はあるのにないと思って同じものをもう一度買ってしまうことも減るので、経済的にもムダがなくなります。

最後に「精神的メリット」ですが、単純に、すっきりと片づいていると気持ちがいいですよね。片づいていないことに対するイライラがなくなります。

――整理整頓ができるようになると、お子さんにとってもよいことがありそうですね。

はい。学習スペースが片づいていないと、参考書を探したり、ノートを広げるスペースを作ったりすることから始めなければいけません。

でも、整理整頓ができていれば、学校から帰ってきてすぐ勉強にとりかかれますよね。それから、片づいていないことで保護者の方に叱られたり、探し物が出てこなくてずっと不安な気持ちでいたりということがなくなります。

お互いにイライラすることが減って、親子関係がよくなったというご家庭もありますよ。

「整理整頓」を通して、選択する力や判断力を磨こう!



――家が片づいていると家族の雰囲気もよくなるというのは納得です! 次に、上手に整理整頓ができるようになるために、整理整頓ができない原因を教えていただきたいです。

「うちの子は片づけができなくて…」という保護者の方からの相談も多いのですが、そういうお宅にうかがうと、片づける環境が整っていないことが原因ということがとても多いです。

片づける場所や仕組みができていないので、「片づけなさい」と言われても、お子さんは何をどうしたらいいのかわからないんですね。
極端な例では、生まれてから家の中が片づいた状態を知らないで育ってきたというお子さんもいます。

――育ってきた環境が関係するんですね。

はい。反対に、保護者の方が片づけすぎてしまっていて、自分では片づけたことがない、捨てる経験をしたことがないというお子さんもいます。
とくに男の子にありがちなんですが、部屋の片づけから、学校のプリントや持ち物の整理まで、すべてお母さんがやってしまっている。

そんなお子さんは、自分の部屋を与えられたとき、あるいは一人暮らしが始まったときに、どうやって片づけたらいいのかわからないという状態になりやすいです。

――たしかに、お子さんのスペースや持ち物の整理は、保護者の方がやっているというご家庭も多いかもしれません。

さきほど言ったように、整理には不必要なものを取り除くという意味があります。人間の脳は一定の容量しかありませんから、物がどんどん増えていくと覚えきれずに、自分が管理できる量をすぐに超えてしまいます。

ですから、自分の管理できる量まで、いらないものを手放していかなければいけません。
この手放す作業を保護者の方がやってしまうと、お子さんは、自分にとって必要なものと不必要なものの選び方がわからないまま育ってしまうことになります。

――持ち物を手放す経験が、必要なものを見極める経験につながるんですね。

その通りです。人は生きていくうえで、今日着ていく服、今日食べるものというふうに、毎日さまざまな選択をしています。
中高生なら近い将来、進学や就職など、自分の生きていく道を選ぶような人生の岐路がいくつも訪れます。人生は選択の連続なんです。

生きていくうえで必ず必要になる「選ぶ力」を身につけるために、整理整頓は自分で選びとることのトレーニングになります。
ですから、私は保護者の方にアドバイスするとき、必要なもの・不必要なものの取捨選択をぜひ本人にやらせてくださいとお話ししています。

――「いる」「いらない」を選んでいくことは、判断力をつけるためにもよい影響がありそうですね。

私は自分の子どもにも、必要なものを選びとる練習をしてほしかったので、2歳から声かけをしてきました。
声のかけ方としては、「ひとつ入ってきたら、ひとつさようならしようね」これだけです。

物が入ってきた分、手放す。これで増えません。入ってきたら、取捨選択をして手放すのが当たり前になっているので、いま中学生ですが、すごく判断が早いです。

私が「これ、いる?」と聞くと「いる」「いらない」をすぐ答えられます。自分にとって必要なものを判断するのが早いんですね。

――少し意外でしたが、整理整頓が選ぶ力や判断力を養うトレーニングになるというのは大きなメリットですね。

今まで保護者の方が選んでいたのであれば、お子さん自身に取捨選択をさせるということは、今こそ意識してやってもらいたいポイントですね。

「よく使うもの」を「わかりやすく」「取り出しやすく」片づけられる仕組み作りを



――ここまで、整理整頓は必要なものと不必要なものを選ぶことが大切というお話をうかがってきました。続いて、実際に子ども部屋を整理するときの実践的なポイントを教えていただきたいです。

実際に部屋を片づけるときも、まず「整理」することが大切です。

「片づけたつもりでも、すぐ散らかってしまう」という声も多いのですが、そういう場合、整理をせずに整頓だけしていることがほとんどです。取捨選択をしないで、並べ直しているだけなんですね。

まず必要なものを見極め、不必要なものを手放して、管理できる量をキープすることを意識しましょう。

――お子さんの持ち物はどのように整理するとよいでしょうか?

「整理」と「整頓」を分けて教えてあげたいですね。
私が片づけにうかがうと、まず棚の中のものを全部出します。そして、お子さんに「これは使っている?使っていない?」と聞くと、3分の2くらい使っていなかったりする。

3分の1の使っているものだけ、棚に戻せばリバウンドはしません。たとえば50冊の中から必要な1冊を探すのは大変ですよね。でも10冊の中から1冊を出すのは簡単です。
不必要なものを省いて、必要な物だけにするということが大切です。

――不必要なものを手放すという点については、どんなふうに声をかけたらよいでしょうか?

ポイントは、「なぜ手放す必要があるのか」を説明するよう声がけをすることです。たとえば、おしゃれに興味があるお子さんで、洋服、アクセサリー、バッグ、靴などがどんどん増えて困っているというご相談もとても多いです。この場合も大前提として、自分で管理できる量まで減らすことが必要になります。

私が片づけにうかがったお宅でお子さんの洋服だけで300着も出てきたお宅がありました。
でも本人に「300着も管理できる? 今、着ているのは何着?」と聞くと、よく着ているのは10着だけだったということもありました。

ただ「何枚まで減らしなさい」と言っても伝わりにくいので、収納できるスペースや管理できる量には上限があることを教えてあげたいですね。

クローゼットなら「ハンガーは10本まで」「引き出しは3段分まで」と上限を決めて、「ここに入るだけ」と伝えるのがわかりやすくおすすめです。
そして、「アイテムがひとつ増えたら、ひとつ手放すこと」で管理できる量をキープさせます。

なぜ手放す必要があるのかを説明することで、納得してくれるお子さんも多いですよ。 

――不要なものを取り除いて整理ができたら、次は「整頓」ということになると思います。収納場所を作るポイントはありますか?

整理ができたら、わかりやすい収納の仕組みを作ってあげましょう。「よく使うもの」を、「どこに何があるかわかりやすく」、「取り出しやすく」収納するのが鉄則です。
まず、種類ごと、あるいは使う頻度ごとに分けていきます。そして、できればワンアクションで取り出せる形の収納が理想的です。

たとえば、教科書や問題集などは種類ごとに分けて、本棚やカラーボックスに立てて収納するのがおすすめです。
書籍類は出し入れするときに倒れやすいのですが、倒れてしまうと、倒れたものを押さえながら取り出したりと、よけいな動作が必要になってしまいます。

背表紙が見えるようにファイルボックスを使ったり、ブックエンドを使ったりして、倒れないように工夫すると、取り出しやすく、片づけやすい仕組みになります。

▼子供部屋を整理整頓した一例。本をファイルボックスに収納することで、倒れにくく、取り出しやすくなっています。

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勉強がはかどる学習スペースの整理整頓のポイントは? 



――お子さんの学習机など、学習スペースも片づけ方に悩む人が多いポイントかと思います。勉強がはかどるスペースにするためのポイントはありますか?

「よく使うもの」を、「何がどこにあるかわかりやすく」、「取り出しやすく」収納するのが基本のルールになります。
勉強がはかどるスペースにするためには、勉強に必要ないものを取り除くという作業が必要です。まず、漫画など趣味のものは、目につかない場所に移動しましょう。

――やはり、「整理」から始めるのがよいんですね。ほかに取り除いたほうがよいものはありますか?

意外に多いのが、保護者の方が必要なものが子どものスペースに置いてある場合です。たとえば、保護者会資料や塾の手続き、月謝のお知らせ関係の書類などがよく見られます。
子どもに関係するものだからと子どものスペースに置いてあることがありますが、実は主に保護者が使うものです。

それから、保護者の方がお子さんに読んでほしいと置いてある本や書類も、お子さんが必要で選んだものではないので、今すぐこの場所に必要ではない物でしたら、置き場所を親子で相談してもよいでしょう。
そのあたりの必要・不必要の見極めも大事だと思います。

――勉強に必要なものをだけを残すことで、勉強に集中しやすい環境を作るんですね。

そうですね。子ども部屋に学習机がある場合は、学習スペースとそれ以外に分けて収納を考えてみてください。
さらに、学用品の中でも、よく使っているものとあまり使わないものに分けることも大切です。

たとえば、学習机に国語の辞書が出してあるけれど、いまは電子辞書をメインに使っているという場合は、国語辞書はいったん違う場所に移動しましょう。
古い問題集で今は使っていないものなども取り除いて、よく使っているものだけを残してください。

――学校や塾から出るプリントのテスト類は復習のために重要になりますが、どのように整理するとよいですか?

テスト類は、学校の先生や塾の講師に重要かどうか、とっておくべきかどうか、直接聞いてみるのもおすすめです。
お子さん自身が重要度を理解するためにも、お子さんが直接、先生や講師に相談するようにすすめてみてください。

とっておくべきものは、すべてファイリングしようとすると余計な時間がかかってしまうので、時系列に重ねておく程度の整頓方法でよいと思います。

――直接勉強には関係ありませんが、学校からのお知らせなどのプリント類も量が多くて、整理しにくいものですね。

たしかに、捨てていいか判断がつきにくく量も多いので、プリント類の整理に悩んでいる保護者の方も多いですね。
私は学校からのお知らせなどは写真に撮って、スマートフォンの写真アプリで「中学校」というアルバムを作り、その中に保存しています。

こうしておくとクラウド(写真などのデータを一か所に集約・管理することで、インターネットを使って、いつでも・どこからでも・誰でもデータの保存・共有が簡単にできるサービス)で家族と共有したり、
出先で学校からのお知らせの内容を確認したりできるので便利ですよ。写真に保存したプリントは捨てているので片づけに悩むこともなくなりました。

――スマートフォンを持っている中高生も増えていますから、データで共有できるのはとても便利そうです。

うちの子どももスマートフォンを持たせているので、最近では部活の予定などは、LINEのアルバム機能を使って子どもと共有しています。
こうすれば、万が一、自分のスマートフォンのデータが消えてしまっても、トーク履歴に残っているのであわてずに済みます。

データでも管理できる量をキープすることが大切になりますので、撮ったらすぐにフォルダ分けをする、必要なくなったものは消去しておくなど整理を心がけましょう。
学校からのおたよりを管理できるアプリなどもいろいろ出ていますから、使いやすいものを探してみてください。

それから、最近は学校からのお知らせや年間予定表などが、学校のホームページで確認できる場合が増えているようです。
プリント類の整理に悩んでいる人は、学校のホームページで閲覧できるものがないか確認してみるのもひとつの方法になります。

――文房具の買い置きなど、細かいものの整理におすすめの収納グッズはありますか?

細かいものの収納には、引き出し式のグッズがおすすめです。大きい箱や深さがある引き出しですと、底に沈んだものが見えず取り出しにくくなってしまうので、ひと目で中身がわかるような浅い引き出しがベストです。

また引き出しを引いたり押したりしたときに中身がずれて混ざらないように、トレーを使って仕切りましょう。
消しゴム、シャーペン、カラーペンというふうに、それぞれのお家を作ってあげるイメージで、種類ごとに分けてトレーを並べると見やすく、取り出しやすくなりますよ。

▼子供部屋を整理整頓した一例。必要なプリントも、トレーに置いていて見やすくなっています。

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整理整頓は人生に欠かせない判断力を育む! 子ども自身に片づけさせる機会を増やして


――思春期のお子さんは保護者の方の話を素直に聞いてくれない場合もありがちです。どのように声をかけたら、上手く整理のコツを伝えられるでしょうか?

ただ「片づけなさい」と言うと、強い言葉で叱られたような感覚になり、片づける気持ちにつながりません。
反抗期に入ると、とくに否定的な言葉には耳をふさいでしまいますので、前向きな言葉で伝えてあげてほしいですね。

整理整頓をしてほしいということであれば、「片づいていることのメリット」について、片づいているとこんないいことがあるよ、とプラスのことを伝えてあげるとよいと思います。

――とくに片づけが苦手というお子さんに、保護者の方ができることはありますか?

整理整頓をしない・できないお子さんは、その状況に不具合を感じていないんですね。
保護者の方からすると「片づけなさい」と言いたくなるような状態でも、本人は困っていないので、いくら言っても片づけません。

そういう場合は、困った状況になったときに手を差し伸べてあげることです。

たとえば、学校の大事な書類をなくしてしまったというような苦い経験をしたときに、「ものをなくさないためには片づけが必要だよね」「こういうふうに片づけると必要なものがわかりやすいよ」というふうに声をかけてあげると、伝わりやすくなると思います。

――たしかに口うるさく言われるとやる気が出ませんよね。保護者の方は、我慢が必要なところかもしれません。

中高生に片づけを促したいときは、マイナスよりプラスの言葉で声をかけること。口うるさく言うよりも、本人が困るまで待つ姿勢が必要です。

――ここまでお話をうかがって、整理整頓が人生を生きていくうえで大切な判断力につながっているということが印象的でした。最後に、お子さんに片づけを習慣づけたい保護者の方に、一言いただけますか?

片づけにはメリットがたくさんあります。片づけはムダな時間や労力を減らし、自分の生活をよりよく過ごすためのステップのひとつです。
こうした考え方を伝えることが、私自身も子育ての中で、親としての大切な役割のひとつだと考えています。

そして、整理整頓というのは、人生の岐路で自分の生きる道を選択していくトレーニングになるものです。ぜひ、お子さん本人に片づけをやらせてあげてください。

中高生は部活や勉強で忙しいこともあるでしょう。片づけが苦手な人にとっては嫌なことに思えるかもしれません。
でも、整理整頓を避けて育ってしまうと、のちのち自分の人生を選ぶことができない大人になってしまうと言っても過言ではありません。

片づけを通して、整理整頓の大切さを親子で話し合う時間をぜひ作ってください。

■プロフィール
伊藤朋美(いとう ともみ)


株式会社Re-style代表取締役。インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー1級、整理収納コンサルタント。10年以上に渡り住宅メーカーのリフォーム部門に勤務。2011年整理収納片づけサービスを提供するRe-styleを設立。2児の母としての等身大のアドバイスが、子育て中の女性を中心に定評を得ている。起業から2000件以上の整理収納アドバイスを行い、企業からのセミナー依頼も年間200件を数える。テレビ出演、雑誌監修、コラム執筆など各メディアで幅広く活動中。

株式会社Re-style | 家が整えば毎日は輝く