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中高生の暗記に悩んでいる保護者様必見!成績アップに効果的な記憶力の伸ばし方 ~記憶力チャンピオン・池田義博さんインタビュー~


日々、勉強に取り組む中高生にとって「記憶力アップ」は、関心の高いテーマの1つですよね。そこで、今回はお話をうかがうのは、記憶力日本一6連覇の記録を持つ、記憶力チャンピオンの池田義博さん。人間の脳と記憶の関係から、記憶力をアップさせるコツ、集中して勉強するために家庭でできるサポートまで、記憶力にまつわるあれこれを聞きました!

記憶力は個人の能力や年齢に関係なく、鍛えられる!


――池田さんは40歳を過ぎてから記憶術を始めて、国内や海外の大会でも活躍されていると聞きました。「記憶力」と聞くと生まれつきの才能のように感じますが、年齢に関係なく鍛えられるものなのでしょうか?

はい、鍛えられます。まず記憶の定義については、心理学的に次の3つのポイントで定義されています。

① 記銘……覚えること
② 保持……覚えておくこと
③ 想起……思い出すこと

こうした「記憶」する力は、ほとんどの人が本来持っている力です。記憶力チャンピオンと呼ばれる私も、たとえば、小学2年生のお子さんでも、もともと持っている記憶力に大きな差はないと思っています。では、何が違うのかというと、覚え方のコツやテクニックを知っているか知らないかというだけのことなんです。

――子どものほうが物覚えがよいと感じることがありますが、大人と子どもの記憶力に違いはありますか?

あります。それは、脳の発達段階によって覚え方が変わってくるためです。小学校低学年くらいまでの子どもは脳の発達段階として、意味のないものを覚えるのが得意な時期と言えます。たとえば、九九の暗唱やトランプの神経衰弱など、聞いたもの・見たものをそのまま覚えるのに適した時期なんです。それが、小学校高学年から中学生くらいになってくると、脳の構造が変わってきて意味のないものは覚えることが難しくなります。

――大人と子どもでは、覚え方が違うということなんですね。では、中高生になってから、記憶力を鍛えることは可能ですか?

もちろん中高生でも、頭に入りやすい形に変換するコツを意識することで、記憶力を鍛えることができますよ。

――どうやって頭に入りやすい形に変換するのでしょうか?

そもそも、人間の脳は、数字や単語、西暦、人物の名前といった知識や、文章をそのまま覚えるのが苦手です。この単に暗記するような記憶は、「意味記憶」と言われます。それでは人間はどういった形で覚えるのが得意かというと、イメージで覚えるのが得意なんです。

具体的なお話をすると、たとえば記憶術の大会では、ランダムに並んだ数字をできるだけ覚える課題があります。私がこれらをどうやって覚えているかというと、それぞれの数字にいろいろなキャラクターやアクションをあてはめるんです。ただ単に数字を覚えるのではなくて、頭の中にイメージが浮かぶような工夫をすることで覚えていきます。

――なるほど、確かにイメージを当てはめるようにすれば、単語や西暦などの数字も頭に入りやすくなりそうです。
これからの日本の教育は知識・技能を重視する形から「思考力、判断力、表現力」を育む教育へシフトしようとしていますが、今後も記憶力は勉強する上で必要でしょうか?

必要だと思います。教育制度改革で「思考力、判断力、表現力」が重視されますが、これから日本の教育は知識・技能を重視する形から、「思考力、判断力、表現力」を育む教育へシフトしようとしています。では、知識を蓄えておかなくてもよいかというとそうではなくて、考える力や表現する力を発揮するためには、豊かな知識が素地になります。

さきほど、人間の脳は意味記憶が苦手だというお話をしましたが、いわゆる暗記するような覚え方は、誰にとってもつらくて当たり前なんです。でも、楽に覚えられるようになれれば、一気に勉強が楽しくなるのではないでしょうか。

――記憶力を鍛えて学力の土台が築ければ、これからの時代に求められる思考力・判断力・表現力が発揮しやすくなるんですね!

記憶力をアップさせるためのキーワードは「意志」「回数」「感情」の3つ


――覚え方のコツを知っているかどうかで記憶力に差が出るというお話がありましたが、具体的にはどのようなコツがあるんですか?

近年、「短期記憶」と「長期記憶」という言い方を耳にする機会が多くなりました。短期記憶とは短期間のみ保持される記憶のことです。例としては、一時的にランダムな数字を暗記する場合などが、短期記憶に当てはまります。「長期記憶」とは、長期間保持される記憶のことです。例としては、個人的な経験や自転車の乗り方を持続して覚えている場合は、長期記憶に当てはまります。

覚えたことを定着させるためには、短期記憶を長期記憶にできるかどうかがポイントになります。人間の脳の中で記憶をつかさどるのは海馬という部分です。この海馬は門番のような存在で、入ってきた情報が重要か重要でないかを判別して、重要な情報は記憶として残すという働きをします。ですから、海馬に重要だと判断させることができれば、短期記憶を長期記憶にすることができるんですね。

――脳の記憶のメカニズムはそんなふうになっているんですね! 重要だと判断させるとは、どんなことをするんですか?

はい。海馬に記憶を強化させる条件として、意識したい3つのポイントがあります。

①意志……覚えようとする意志
②回数……脳は「忘れる」もの。定着させるためには復習が必要
③感情……感情とひもづいた記憶は残りやすい

まず、①の「意志」についてですが、よく「初めて会った人の顔と名前が覚えられない」という人がいますよね。それは実は、覚えようという意志がないんです。人に会う前に「今日、会う人の顔と名前を絶対に覚えよう」と強く思うことで、記憶のスイッチが入ります。「覚えよう」と意志を持つと特別なテクニックを使わなくても、かなり覚えることができます。

――まず「覚えよう」と意識することが大切なんですね。では、②の「回数」についてはいかがですか?

2つ目の「回数」は、勉強に関しては「復習」ということになります。私たちが日々見たり、聞いたりしている情報は膨大ですから、先ほど海馬の話をしたように、情報を取捨選択して重要でないものは「忘れる」というのも脳の特性の1つです。

記憶に関する研究の先駆者であるドイツの心理学者・エビングハウスの忘却曲線でも有名ですが、人間は100%覚えた状態から急激に忘れていって、1日後には約70%も忘れてしまうと言われています。しかし、同じ内容をくり返し学習することによって、記憶の定着率を上げることができます。

 
(グラフは編集部が池田さんの話をもとに独自作成)

――復習の大切さがよくわかりました! 最後の「感情とひもづける」とは、どういうことですか?

脳の中で記憶をつかさどる海馬と隣り合って、喜怒哀楽つまり情動が生まれる扁桃体という部分があります。この扁桃体で感情が生まれると、海馬が刺激されて記憶が強化されることがわかっています。楽しい思い出は覚えようとしなくても、強く記憶に残りますよね。思い出のように、実際に体験したことや感情を含む記憶は、エピソード記憶と呼ばれます。

人間の脳にとっては、意味記憶よりもエピソード記憶のほうが覚えやすいものなんですね。ですので、お子さまが小さい時は記憶術を覚えようとするよりも、絵本を読み聞かせるなどしてお子さまの情緒を育てた方が、結果的に記憶力向上につながります。

とは言え、教科書などをただ読んでも感動はしません。そこで、覚えたい内容と感情をひもづけるテクニックを使うわけです。つまり、勉強内容をイメージ化してエピソードに変換した形で脳に見せてあげるんです。

――歴史の西暦や人物の名前、英単語など暗記したい内容は、イメージやエピソードにするのが難しそうですが、よい方法はありますか?

エピソードに変換するという意味で、歴史を勉強するときにおすすめなのが、日本史や世界史を漫画で描いた教育漫画です。イメージ化されている漫画で全体の流れを通して読んでおいて、教科書などで細かい情報を補完していくというのも、1つの勉強法になります。

また、受験勉強などで語呂合わせもよく使われますが、「面白い」という感情が動くので覚えやすいんですね。化学では元素記号の周期表を覚えるための「水平リーベ 僕の船」などが有名ですが、とくに覚えにくい英単語などにも語呂合わせはできますよ。

たとえば、「すさまじい、ものすごい」といった意味の「tremendous」という英単語があります。「tre(鳥) -men (目)―dous(出す)」という感じで区切って、「鳥がすさまじい勢いで目を出す」とイメージするわけです。できるだけバカバカしい、面白いイメージをしたほうがより強く記憶に残すことができますから、ぜひ工夫してみてください。

効率よく覚えるために「薄いペンキを塗り重ねる」イメージで復習を


――ここまで「覚え方のコツ」を教えていただきましたが、さらに覚えたことを定着させるためにはどんなふうに勉強すればよいのか、教えていただきたいです。

さきほどの忘却曲線のお話の中で少し触れましたが、記憶を脳に定着させるためには「復習」がとても大切です。しかし、ある範囲の内容を覚える勉強をするときに、すべてを100%覚えるまでじっくりと勉強するというのは、あまりよい方法ではありません。

効率のよい復習方法としておすすめしたいのは、学習心理学で言うところの「分散効果」を利用することです。分散効果については、ひとつ、とある実験をご紹介します。

たとえば、英単語を100個覚えるとします。Aくんは1日4時間、1個ずつ英単語を着実に覚えてから次へ進むという勉強方法を行い、英単語を100個覚えました。一方、Bくんは1日1時間ずつ英単語100個全部を覚える時間を作り、それを4日間くりかえす勉強方法を行い、英単語を100個覚えました。トータルでは同じ4時間で、覚えた単語数も同じですが、分散して勉強したBくんのほうが日にちが経ったあとも、記憶の定着率がよいという結果になるんですね。

――分散して勉強したほうが長く記憶に残りやすいんですね。

そうです。私はよく「薄いペンキを塗り重ねて厚くするように」と例えています。ペンキも1回塗っただけではムラになってしまいますから、何度も重ねて塗りますよね。

1回1回は記憶の定着率が20%でもかまいませんし、多少理解できないところがあってもとばしてかまいませんから、スピード感を持って一度全体を終わらせます。2回目以降も同じように全体を通して勉強します。脳というのは一度全体像を把握すると、次は足りないところを自動的にピックアップして補ってくれるんですね。

ですから、薄くても全体を終わらせる作業をくり返したほうが、効率よく記憶を定着させることにつながります。

「勉強したのにすぐ出てこない!」を解決する、1分間ライティング


――テストのときなどに「覚えたはずなのに、すぐ出てこない」という場面も多いと思います。そんなとき役に立つ勉強方法があれば、教えてください!

そうですね。私は、記憶には「使える記憶」と「使えない記憶」があると考えています。「覚えたはずなのに、すぐ出てこない」のは「使えない記憶」です。試験などでは、何か問われたときに、それに付随する情報がすぐ出てこないと、意味がないですよね。覚えた情報を「使える」状態にしておきたいわけです。

必要なときに情報をすぐ出して「使える」状態にする、つまりアウトプットするためのトレーニング方法が「1分間ライティング」です。

――その「1分間ライティング」とは、具体的にどのように行うのでしょうか?

たとえば、「鎌倉幕府」というテーマを決めて、鎌倉幕府に関する西暦、人名、出来事などを、1分間と時間を決めて書き出します。1分間書き続けることができれば、それは「使える情報」になっていると言えるでしょう。もし、書くことができなかったら、足りないところが見えてきますから、復習して、くり返しチャレンジすれば、効率よくアウトプットのトレーニングができるわけです。

――たしかにインプットして覚えるだけでなく、アウトプットの練習も必要ですね。ほかに、アウトプットのトレーニング法はありますか?

記憶するための勉強法として最強と言われている「想起練習」という方法があります。これは、「想起」つまり「思い出す」という作業を勉強に取り入れた方法です。

たとえば、詩を覚えたいときに、一度目を通したらテキストから目を離して、思い出しながら暗唱し、わからなくなったら再びテキストを見るというふうに進めます。テキストを何回も読む、インプットだけ続けるよりも思い出しながら覚えていくほうが、記憶の学習としては効率がよいというわけです。

さきほどの1分間ライティングも思い出しながら書き出すという作業なので想起練習にあたります。また、模擬試験なども思い出しながら答えるので、本番の試験のために使える記憶にするトレーニングとして効果的です。

中高生が勉強に集中しやすい時間帯や、部屋づくりとは?

――記憶力をアップさせるための家庭での学習の取り組み方や、保護者の方がサポートできることもお聞きしたいです。まず、勉強する場所の環境づくりとして、気をつけたほうがよいことはどんなことでしょうか?

「覚える」勉強をするときには、集中して取り組める環境が望ましいですよね。そこで、片付いている部屋と、散らかっている部屋のどちらがよいかと言えば、圧倒的に片付いている部屋のほうが覚えることに集中できます。なぜなら、部屋が散らかっていると情報量が多くなって、脳の容量や処理能力を持っていかれてしまうからです。同様に、「覚える」勉強をするときは、音楽やラジオも聴かないほうがいいと思います。

――部屋の温度も調節したほうがよいでしょうか?

人間も動物ですから、生きていくために危機感があるときに脳が働きます。勉強する場所は温かくほっとするような温度よりも、多少下げたほうが記憶力を高めるにはいいです。集中もできます。冷えてしまわないように足元は温めてあげられるとなおよいですね。

――食事にも気を使っている中高生の保護者の方は多いと思いますが、集中力を高めるために食事について気をつけたいことはどんなことでしょうか?

食べものに関しては偏りがないように、バランスのよい食事が一番だと思います。
ひとつだけ気をつけるとしたら、血糖値が急激に上がるのを避けることです。というのも、急激に上がった血糖値は、急激に下がる性質があるからです。血糖値が急激に下がるときは頭がぼーっとしてしまうので、記憶することに集中するには、あまりよい状態とは言えません。

とは言え、脳を働かせるためにはエネルギーとなるブドウ糖が必要です。砂糖が多く含まれているものからブドウ糖をとると急激に血糖値が上がってしまうので、ご飯やパンなどの主食からブドウ糖のもとになる炭水化物をとるのがよいでしょう。朝食を抜くのは、エネルギー不足で脳が働かなくなるので、やめたほうがいいと思います。

――塾の授業の合間などの間食におすすめの食べ物はありますか?

私がおすすめしているのは、ナッツやカカオ70%以上のチョコレートです。ナッツはたんぱく質が多く炭水化物が少ないので、血糖値が急に上がることなく栄養補給ができます。また、チョコレートでカカオ分が多いものは、砂糖が抑えられているうえ抗酸化物質のポリフェノールを摂ることができるからです。
それから、水分補給もとても大事です。脳の組織は水分量が多いので、水分量の変化に敏感でパフォーマンスに大きな影響があります。こまめに水分をとることを心掛けてください。

――記憶するのに最適な時間帯や、効率よく覚えられるタイムスケジュールがあれば教えてください。

脳が働く時間帯というのはある程度決まっているので、それに合わせて勉強すると効率がよいでしょう。個人差もありますが、1日単位で見ると脳の働きは以下のイメージのようにアップダウンしています。
 

(グラフは編集部が池田さんの話をもとに独自作成)

まず午前中は脳がよく働きます。それからみなさん経験があると思いますが、昼食を境に脳の機能が落ちます。次の夕方の4時ころからまた働き出して、夕食を食べるまでは脳がよく働いている状態になります。ですから、学校から帰ってきてすぐゲームをしたりテレビを観たりしてしまうと、せっかく脳がよく働く時間帯を逃してしまうので、もったいないんです。夕方から夕食まではぜひ勉強にあててください。どうしてもゲームなどをしたいときは、脳の活性化が落ちつく夕食後のほうがよいでしょう。

――寝る前の1~2時間にグラフのピークがあるのは、なぜですか?

寝る1~2時間前は「記憶のゴールデンタイム」です。なぜなら、睡眠中の脳の中では、昼間入ってきてバラバラの状態で保管されている情報を海馬が整理して、重要な情報を記憶に残すという作業をしているからです。つまり寝る直前に覚えたものは海馬がすぐ整理作業に入れるので、効率よく記憶に残すことができるんです。ですから、寝る前の時間帯は単語や漢字を覚えるなどといった暗記科目などの覚える勉強にあてるのがよいと思います。

――ここまでお話をお聞きして、記憶力は特別な人だけが高められる能力なのではなく、「覚え方のコツ」さえ知っていれば、誰でも活用できることがよく理解できました。最後に「記憶力が悪いかもしれない」とお悩みのお子さんや保護者の方にメッセージをいただけますか?

記憶力は才能ではなくて、あくまで技術です。記憶に残すためには、脳の記憶のメカニズムにそった形に変換することで、覚えやすくなる仕組みになっています。記憶を強化するための条件として挙げた「覚えようとする意志」「回数(復習)」「感情にひもづけること」の3つを、日々の勉強の中で意識してみてください。

勉強のやり方や覚え方が、3つの条件にあっているかどうかを自分なりに考えたり、工夫したりして勉強を進めれば、きっと覚えることができますし、「記憶力が悪いかも」と悩むこともなくなるはずです。

【プロフィール】
池田義博(いけだ よしひろ)

大学卒業後、大手通信機器メーカーのエンジニアとして勤務。その後、塾経営に携わった際に記憶術と出会い、約10ヶ月の独学で初出場した2013年の大会で記憶力日本一となり、以降6連覇を達成している。2013年開催の「世界記憶力選手権」では日本人初の「記憶力グランドマスター」の称号を獲得。現在は、記憶術を含めた脳の使い方を広めるために精力的に活動している。フジテレビ「ホンマでっか⁉ TV」、TBSテレビ「マツコの知らない世界」など多くのメディアに出演。著書に『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』、『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる超集中術』(ともにダイヤモンド社刊)、『記憶力日本一を5度獲った私の奇跡のメモ術』(幻冬舎刊)など多数。

池田義博オフィシャルサイト