受験

「大学入学共通テスト」がいよいよスタート! 新大学入試に対応するために必要な力とは? ~東京個別指導学院の進路指導センターに最新情報を聞いた!②~

大学入学共通テストの出題傾向は? 試行調査(プレテスト)と問題作成方針に込められたメッセージ

――2021年1月から大学入学共通テスト開始ってことは、もう2年を切っていることになるんですね! 具体的にどんな問題が出されるのかは決まっているんですか?

寺田さん:はい。すでに2017年11月と2018年2月・11月に大学入学共通テストの試行調査が行われました。テストを作成した大学入試センターでは試行調査の問題や正解を公開しています。

また、2019年6月には大学入学共通テストの問題作成方針が発表されて、出題傾向はほぼ定まりました(※)。
この試行調査と問題作成方針を見ていくと、どういう問題を出そうとしているか、どういう力を問おうとしているのかがわかります。
いわば、大学入試センターからの受験生へのメッセージなのです。

今回は、より本番に近い形で行われた2018年の試行調査の問題を見てみましょう。

――試行調査では、記述式はどのように出題されたのでしょうか? 
 

寺田さん:国語と数学Ⅰの範囲で記述式の問題がそれぞれ3問ずつ出題されました。国語では記述式の解答文字数は最大80字から120字程度でした。
数学Ⅰでは「y=2」程度の短い答えを記入する短答式と、「時刻によらず、S1=S2=S3である」といった短い文で答える記述式の問題が出題されました。
記述式の導入に伴って、国語では試験時間が80分から100分に、数学Ⅰでは60分から70分に増えています。

――記述式で答えなくてはいけない部分が、こんなに増えるんですね。試験時間が延びているとはいえ、記述式に慣れておかないと間に合わなさそうです。英語のテストの変更点はどんなポイントがありますか?


石川さん:センター試験の英語では、問題用紙には「外国語[英語(筆記)]とあり、指示文は日本語でした。そして、マークシートで1つの答えを選ぶ解答方式です。
これに対して、試行調査では「外国語[英語(リーディング)]となり、指示文もすべて英語になりました。

また「You may choose more than one option.( 答えを一つ以上選びなさい)」という指示がある問題もあり、複数の選択肢をマークしないと正解できないという出題形式が見られました。

――指示文まで英語なんですね! しかもしっかり指示文を読めないと、うっかり1個しか選択肢を選ばず不正解、といったミスも起きてしまいそうです。

寺田さん:その通り、きちんと指示文を読めているかも問われているのです。
さらに、センター試験ではほぼ半分を占めていた文法や発音、アクセントや語句・整序を問う問題がなくなり、試行調査では「リーディング」とある通り読解問題のみになりました。

――センター試験では、英語の配点は筆記200点リスニングが50点でしたが、配点も変わったのでしょうか?

寺田さん:はい。試行調査では、リーディングが100点、リスニングが100点で半々となり、リスニングのウエイトが上がりました。「読む」と「聞く」を均等に評価したということですね。

石川さん:また、センター試験のリスニングでは問題文が2回ずつ読み上げられますが、共通テストでは1回しか読み上げられない問題が半分近く出題されました。
ふだんの会話では何度も聞き返すわけにはいきませんから、より現実の会話に近い聞き取り能力が求められるということになります。

――英語のリスニング、1回しか読み上げられなくなる問題も出るんですね。これからはリスニング問題にも慣れるよう、普段から英会話などに慣れておく必要がありそうです。
数学の試行調査では「計算をさせない」問題が出題されたと聞きました。数学なのに計算させないって……うーん、正直想像つかないです。どういうことなんでしょうか?  

寺田さん:計算をしなくても解ける問題が出題され、注目されています。
今までは、「公式を覚えているか」「解き方が身についているか」という問題でしたが、「数学的に考えることができるか」というプロセスを問う問題が出てきました。
 
また、とくに注目されているのは、階段の写真が使われた問題も注目されています。
これは、建築基準法によって小学校と高校の階段の基準が違うという話から、三角比を使って答えを出していく問題です。

解くポイントは、「階段という身近なものを数学的に考える」「三角比を使って解くことに気づく」ことです。
今までの数学のテストでは、「こういうふうに書いてあるから、二次関数を使えばいいんだな」といったパターンがあって、ある意味、わかりやすかった。
ところが、「何を使うか」から問われる問題が出てきたんですね。

また階段の問題のような日常生活や社会の事象などを題材とする問題は、
数学Ⅰ・数学Aの共通問題から最低1題、数学Ⅱ・数学Bからも1題出題するように努める方針になっています。

――なるほど、数学でも問題文の意図を読み解く必要があるんですね。全体的な出題傾向では、どのような変化が見られたのでしょうか?

石川さん:ほとんどの科目で複数の素材を読んで考える問題が出題されたことが、ひとつの大きな変化です。
たとえば、国語の大問2では著作権についてのポスターと著作権法の一部、大問3では詩とエッセイ、大問5では漢文とその漢文に関する3人の生徒の会話文を含む3つの文章が使われています。

寺田さん:これらの複数の文章を見比べて「これとこれは同じことを言っている」「これとこれの違いは何だろう」
「ここで言っていることに該当するのは、別の資料では何だろう」といったことについて考えさせる問題が、国語だけでなく多くの科目で見られました。

石川さん:国語以外に数学や物理などの理系の科目や世界史Bなど多くの科目で、会話文が使われているのも変化の一つです。

寺田さん:このように階段や著作権を扱った問題や会話文が多く使われたことから、日常生活や社会との関わりを意識した問題が出題される傾向がわかります。
また複数の資料を読み取る問題や、数学の「計算しない」問題のように、解答プロセスを重視する問題も出てくるでしょう。

さらに、共通テストでは解答形式に記述式が入るだけではなく、マーク式でも今までにない回答方式の問題が出されるだろうということがわかります。

――ここまで出題傾向って変化するんですね! 全部対応できるように勉強しなきゃいけないなんて、今の子どもたちってすごく大変そう。なぜここまで変化させるんでしょうか。

石川さん:会話文を含む複数の資料を読ませる問題や、複数の答えがある問題が出てきたのはなぜかというと、実はそこがAIの苦手な分野だからです。
AIには文脈や会話の流れを判断できないという弱点があります。
AIは統計的また確率的に唯一の答えを出すことは得意ですが、前例のない問いには臨機応変に答えられないんですね。

ですから、これからはAIにできないことを求めますというメッセージが試行調査の問題に込められていると言えます。

――なるほど! AIではできない強みを伸ばしたいという意図があるんですね。

「なぜ」を大切にする勉強に、できるだけ早くシフトしよう!

――ここまでお話しをうかがって、センター試験を通ってきた世代の私たちの大学入試とは、まったく違う大学入試が始まるんだと感じました。入試が変わることで、受験対策の方法も大きく変わるのでしょうか。

石川さん:はい、大きく変わります。これまでの「知識・技能」重視の学習では、学校の先生や塾の講師が「これが正解です。みなさん覚えてください」と一方向で伝達するスタイルが一般的でした。
これは一斉授業に向いているスタイルです。

寺田さん:ところがこれからの勉強は、複数の答えがあったり、答えのない問いを考えたりしなければいけません。
教える側と生徒の間でも「なぜその答えになるんだろう」「その根拠は何かな」と、双方向のコミュニケーションをとることが望ましいと考えられます。

――双方向のコミュニケーションをとる対策って、どうやって勉強したらいいのでしょう。1人で対策するのは難しそうですね。

寺田さん:双方向のコミュニケーションには、個別指導のスタイルが向いています。
1人ひとりの生徒の解答に応じて、その根拠やプロセスを先生と一緒にやりとりの中で確認していくという対策をしていくとよいでしょう。

――今までは知識・技能をインプットすることが学習のメインでしたが、一歩進んだ勉強をしなければいけないんですね。新しい大学入試のために勉強するうえで、気をつけたほうがいいことはありますか?

石川さん:これからは「なぜ」を大切にする勉強が重要になっていきます。今までは問題から解答まで一問一答で答えが合っていればよかった。
しかし、これからは「なぜ、そう考えたほうがいいのか」「なぜ、AではなくBなのか」といった思考のプロセスも問われます。

――それでは、「なぜ」「どうして」とつねに考えることを意識するには、どのように勉強を進めたらよいのでしょう。 何かよい勉強法はないでしょうか。

寺田さん:私がおすすめしているのは、問題を解く時にノートを用意して、解答に至った根拠の説明を書き出したり、自分が問題を解きながら考えたことを記録したりする勉強法です。

石川さん:今まではマーク式で1つ答えを選ぶなら、「これっぽいな」とあやふやでも対応できる部分がありました。
試行調査であったような複数の答えがある問題は、しっかりとした確信がないと正解と不正解の見極めができません。
正しい選択肢を選びだすには、しっかりとした理由が必要です。

つまり試行調査で出題されたのは、解答プロセスや根拠をきちんと見つけているかどうかを見極めることができる問題だと言えます。

――きちんと理解したかを確認するためとはいえ……少し意地悪な印象を受ける出題ですね。
寺田さん:はい、そういう印象を受けるかもしれません。とはいえ、考えたプロセスを評価するための一つの例ですよね。
問題作成方針によって、複数の選択肢を選ぶ問題は出題されないことがわかりましたが、正解となる組合せが「複数」ある連動型の問題が新たな出題形式として発表されました。

――連動型の問題? たとえばどういった問題でしょうか。

石川さん:前の問で選んだ答えによって、次の問の正解になる選択肢が変わるという問題が試行調査でも出ているんです。
たとえば、「問1で1を選んだら、2では7、問3では5、問4では1」を選ぶのが正解。一方で、「問1で2を選んで、問2で1、問3で1、問4で2」を選んでも正解になります。

前で選んだ解答に、次の問題の正解が連動するという、少々複雑な問題です。

――単純な消去法では対応できなさそうな問題ですね・・・。

石川さん:はい。「なぜ」と問い続ける姿勢、つまり批判的精神を養うのにとてもよい出題形式だと思います。
ここまでお話したような考える力や批判的精神は、一朝一夕では身につきません。お子さまが何年生でも、すぐに対策を始めることをおすすめします。 

※新学習指導要領についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

 [参照元]
(※)
平成29年度試行調査 問題、正解表、解答用紙等|大学入試センター
平成30年度試行調査 問題、正解等_1111|大学入試センター
令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等及び大学入学共通テスト問題作成方針について

[プロフィール]

石川 満(いしかわ みつる)

東京個別指導学院 進路指導センター センター長。大学・大学院在学時に塾の講師を勤めた経験から教育の道に進む。2006年東京個別指導学院入社。以来10年以上に渡って教務を担当し、教育の情報収集・調査を続けながら、指導法の開発や講師の指導にあたっている。

寺田 拓司(てらだ ひろし)
教育業界に携わり30余年。何千人もの子どもたちや保護者に学習・進路相談を行う。現在は東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。
【てら先生】コラム 過去記事一覧|PICK UP|株式会社東京個別指導学院(TKG)
【教育改革】コラム 過去記事一覧|PICK UP|株式会社東京個別指導学院(TKG)