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授業の様子や勉強の仕方ががらりと変わる! 学習指導要領改訂のポイントと今からできる対策とは? ~進路指導センターに最新情報を聞いた!③~


2020年度から、新学習指導要領の実施が順次開始となります。
「新学習指導要領が始まると、今までの勉強方法だとついていけなくなるかも……」という不安の声もあるなか、子どもたちとその保護者はどんな対策を行うべきなのでしょうか。

従来の学習指導要領との変更点や対策について、東京個別指導学院 進路指導センターで聞いてみました。

新学習指導要領の実施によって、小学生や中学生の学びはどう変わるのか

――新しい学習指導要領は、小学校は2020年度から、中学校は2021年度から全面実施、そして高校は2024年度に入学した生徒から年次進行での実施が始まると聞きました(※1)。
まずは、新学習指導要領の改訂のポイントについて教えてください。

石川さん:こちらの記事(「「大学入学共通テスト」がいよいよスタート! 新大学入試に対応するために必要な力とは?~進路指導センターに最新情報を聞いた!①~」)でもご紹介したように、
子どもたちが激変する社会を生き抜く力を育むために、大学入試の改革、そして学習指導要領の改訂が行われます。

これらの教育改革にあたり、育みたい資質・能力として、文部科学省は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」を三つの柱としています。

――なるほど、どれも大人にとっても大切な能力のように思います! ただ、今までの教育から具体的にどう変わるのか、よくわからないのですが……。

寺田さん:今までの教育では知識・技能を覚え理解することを重視してきました。今回の新学習指導要領では、
さらに考える力や表現する力、主体的に学ぶ態度、多様な背景を持つ人々と共に課題を解決する力も育てたいという狙いがあります。

また文部科学省ではHPにて、下記の具体的な変更点を挙げています(※2)。

[どのように学ぶのか]
・主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)
[何を学ぶのか]
・小学校で英語教育の重視
 →3年生・4年生は「外国語活動」、5年生6年生は「英語」の教科化

・小学校で「プログラミング教育」必修化

・高校で「公共」「歴史総合」「地理総合」「理数探究」などの教科・科目の新設

※学習内容の削減は行わない

寺田さん:このように、「主体的・対話的で深い学び」のような新しい取り組みや、新学習指導要領の実施によって新設される教科や科目が出てきます。
英語は、こちらの記事(「 2020年の教育改革「英語」はどう変わる? 英語学習と新大学入試の対策 ~進路指導センターに最新情報を聞いた!~」)で詳しくご紹介していますので、
今回は主体的・対話的で深い学び、プログラミングなどを中心にご紹介します。

主体的・対話的で深い学びによって、授業の様子から家庭学習がガラリと変わる!

 

――「主体的・対話的で深い学び」によって、これまでの授業とはどう変わるのでしょうか? 

寺田さん:今までの学校の授業では、先生が一方的に教えるスタイルが一般的でした。
対して、「主体的・対話的で深い学び」を取り入れた授業は、一方的に教えるスタイルではありません。
数人ずつグループに分かれ、自分たちで調べて討論し、プレゼン資料をまとめて発表するようなスタイルです。今後、このようなスタイルが増えるでしょう。

このとき、先生は何かを教えるというよりも、子どもたちに問いかけたり、子どもたちの手助けをしたりする役割を担います。

石川さん:つまり今後の授業では、多方向のコミュニケーションの中でより深い学びや理解が求められる形に変わります。
従来の知識・技能を理解することが中心の学習をインプット重視とするならば、これからは、考え判断し表現するアウトプット重視型の学習と言うことができます。

寺田さん:インプットする学習は1人でできる部分がほとんどです。しかし、ディスカッションやプレゼンテーションなどのグループワークは2人以上でないとできません。
つまりアウトプットする学習は、1人で行うことはできないのです。

――今までのように、みんなが静かに先生の話を聞いているような授業の様子から大きく変化しそうですね。自宅での学習も変える必要があるでしょうか?

石川さん:そうなると思いますね。今までの自宅学習は、教科書を使って予習・復習をし、知識・技能を定着させることがメインでした。
みんなで学ぶアウトプットの部分は1人ではできませんから、これからはディスカッションの下調べや準備を自宅で学習することが多くなるでしょう。

寺田さん:自宅学習で準備をしっかりしていないと、学校でのグループワークについていけなくなることも考えられます。

文部科学省は覚えるべき知識・技能の量は減らさず、授業時間数もほとんど増やさない方針を取っていますので、ある程度の知識・技能の定着は家庭学習で補わなければ間に合わなくなるでしょう。

「プログラミング教育」で学ぶのは、「プログラミング的思考」

――「小学校でプログラミング教育が必修になる」と保護者の方の間でも関心が高まっていますが、実際にはどんなことを学ぶのですか?

寺田さん:「プログラミング教育」と聞くと、C言語やJAVA、HTMLなどのプログラミング言語を想像する方も多いと思います。
ここで、文部科学省が公開しているプログラミング教育についての記述を見てみましょう(※3)。

“プログラミング教育とは、子どもたちに、コンピューターに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない。”

石川さん:つまり、小学校でのプログラミング教育の目的はコーディングを学ぶことではなく、「プログラミング的思考」を学ぶことなのです。

プログラミング的思考とは、理にかなった手順を踏んで作業を円滑に進められること、あるいは、どう手順を整理すれば課題をうまく解決できるか、論理的に考えることを指すのです。

――論理的に考えるなんてなんだか難しそうですが……本当に小学生でもできるようになるのでしょうか?

寺田さん:はい、できるように学んでいきます。たとえば、スマートフォンの画面をタップすると画面が動くのは、それが「魔法の箱」だからではありませんよね。
小学校の段階では、プログラミングを通じて何らかの指示を与えているから動作していることを理解させるのが第一歩としています。

石川さん:ここでのポイントは、プログラミング的思考とコンピューターを分けて考えることです。実は、プログラミング的思考はパソコンを使わなくても学べます。

たとえば、「教室を掃除します。掃除の手順を初めから終わりまで、日本語で書き出しましょう」という課題で考えてみましょう。

「①机といすを教室の後ろに下げる。②いすを机の上に乗せる…」と書いていくんですが、
「まず机の上にいすを乗せてから移動したほうがいいのでは?」「いすはひっくり返さないんですか」といった抜けているポイントが出てきます。
プログラムはそうした抜けやモレがあると、バグとなってきちんと動作しませんね。

このように、すべての手順を抜けなく記述できる、それらを順序立てて考えるスキルを、プログラミング的思考と呼んでいるのです。

――なるほど、そう考えるとプログラミング的思考の内容がわかりやすいですね。

石川さん:プログラミング的思考は、異文化を持つ人とのコミュニケーションにも役立つ可能性も考えられます。
同じ文化を持つ日本人同士ならニュアンスでなんとなく伝わることでも、外国人には伝わらないことがあります。

しかしプログラミング的思考ができていれば、抜けやモレがなくどんな文化で育った人にも正確に伝えられるような書き方や話し方ができるはずです。
プログラミング的思考はある意味ユニバーサルなランゲージであり、これからの社会を生きるすべての子どもたちに身につけてほしい能力として、小学校でも必修化されることになりました。

――では、プログラミング教育はどのように成績がつけられるのでしょうか?

寺田さん:「必須化」であって「教科化」ではないのです。必須化されて全ての小学生が学ぶことになりますが、「プログラミング」という教化ができるわけではありません。
今ある教科の中や「総合的学習」の時間で行うことになっています。したがって、教科書はなく、通信簿に成績も載りません。

具体的にどの学年でどのくらいの授業時間数でプログラミング教育を行うかも定められていないので、学校によって異なることになります。

――どの教科でどのように習うかはそれぞれの小学校によってまったく違うこともありえるんですね。中学校と高校でのプログラミングの扱いはどうなるんですか?

石川さん:中学校では「技術・家庭」の技術分野で、高校では「情報」で学びます。中学校・高校では実際にプログラミングを書いて課題を解決するという内容まで学ぶことになります。

寺田さん:小学校で必修化になったことで、中学校入試でもプログラミング的思考が問われる可能性は出てきています。
ご家庭でも何かできることはないかとお考えなら、パソコンを使うもの、使わないもの、学年相応の発達段階に応じたものなど、さまざまな教材がありますから、チェックしてみてください。

高校を偏差値だけで選ぶ時代は終わった!? 大きく変わる高校の教科・科目はどれか

――高校の新学習指導要領はどのように変わるのですか?

石川さん:高校の学習指導要領でも、育成すべき資質・能力の三つの柱「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」や「主体的・対話的で深い学び」を取り入れた授業が重視される点は、小学校や中学校の学習指導要領と同様です。

寺田さん:とくに注目されているのは、教科・科目の再編と新設です。
中でも大きく変わるのは社会の科目で、地理歴史科では「歴史総合」「地理総合」の2科目が、公民科では「公共」という科目が新設され、それぞれ必修化となります。

石川さん:「歴史総合」では、世界史と日本史を組み合わせた歴史(近代史以降)を学びます。
今までは世界史と日本史は別々に習っていましたが、「グローバル化が進む中で世界と日本の歴史的な流れを一体のものとして見ていく必要がある」と、総合的に学ぶことになりました。

「地理総合」も同様に社会の変化に合わせて、世界の地理と日本の地理を組み合わせて地図や地理情報システムや国際理解、環境問題など地球規模の課題を考える科目になります。

寺田さん:また公民科は今まで「現代社会」「倫理」「政治・経済」がどれも選択科目だったのですが、「現代社会」が廃止され、「公共」という科目が新設・必修になります。

この「公共」では、選挙権が18歳からになったことを受けて、主権者教育も扱う科目と位置付けられています。
自立した主体として社会に参画するために法律・政治・経済について学ぶ科目です。

――理系では、「理数探究」が新たに設置されたそうですね。

石川さん:はい。数学と理科を横断的に学ぶ科目として、「理数探究基礎」という科目が新設されました。
生徒自らが課題を設定して調査・研究し、議論した結果をまとめて発表するといった学習を探究型学習と言います。

「理数探究」もその名の通り、探究型学習の一例で、観察、実験、調査などの科学的・数学的な手法を学んで実践する科目です。

――探究型学習では、指導する先生に経験が少ないことを心配する声も聞かれますが。

寺田さん:その通りです。ですから、先進的な教育研究に取り組んでいる、スーパーサイエンススクール(SSH)やスーパーグローバルハイスクール(SGH)といった
学校の取り組み事例や成果について他校の先生同士で共有して、実際どのように指導するべきか学んでいる最中です。

石川さん:探究型学習や「主体的・対話的で深い学び」などは経験やノウハウが浸透するまで、学校や先生によってバラつきが出る可能性があります。その点、先進的な授業を行ってきた学校の方が有利です。

――もしかして、これから高校を選ぶときは、偏差値以外の部分にもよく注目しておかないといけないのでしょうか?

石川さん:今までは高校を偏差値だけで選ぶ傾向がありましたが、これからはSSHやSGHの指定校や指定履歴があるかどうかも高校選びの一つの指標になってくると思います。
実際にどんな授業が行われているのか、公開授業などにぜひ足を運んでみてください。

非認知能力や自己肯定感が学び続ける力になるために、保護者ができるサポートとは?

――今回の教育改革の影響を受ける子どもたちが、今、努力しておいたほうがよいことはどんなことですか?

寺田さん:まず、これから新学習指導要領や新大学入試に対応するにあたって、望ましい学習態度を見てみましょう。

■望ましい学習姿勢
能動的な学習姿勢
計画的な学習
意味理解や思考プロセスを重視
 わからなくてもまず考える
■望ましくない学習姿勢
受け身の学習姿勢
場当たり的な学習
丸暗記やテクニック重視
わからないとすぐ正解を求める態度

寺田さん:今回の教育改革によって、今までは通用していた丸暗記や一夜漬けといった場当たり的な学習では対応しきれなくなります。

また、自ら学ぶ姿勢が求められるようになることもポイントの一つです。それから、考える力を養うためには「なぜ、そうなるのか」「どうして、そうなったのか」というプロセスを大事にすることが必要です。

石川さん:つまり、たった一つに答えが決まらないものに対して考え続ける、あるいは、みんなで話し合い続けるという姿勢が求められます。

――今までの学習とは違う、忍耐強さや積極性、コミュニケーション能力などが必要になりそうですね。

石川さん:その通りです。これまでの勉強で重視されてきた知識・技能の部分は、テストなどで数値化できる「認知能力」と言われるものです。

反対に、これからの勉強は「非認知能力」が大切になると言われています。

――「非認知能力」とは、一体どういう能力なのでしょうか?

石川さん:非認知能力は、まじめさ・協調性・好奇心・積極性・自己肯定感といった、数値化して測れない「心の力」のことを指します。
答えのない問いでも考え続けられる能力も、この非認知能力の一つですね。

寺田さん:文部科学省でも、非認知能力について議論されています。非認知能力が高いお子さんは「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間性」が大きく伸びると言われています。
これから求められる資質・能力に、非認知能力が大きく影響するんですね。

石川さん:非認知能力の中でも土台となるのが自己肯定感です。自己肯定感が低いと、「間違ったら叱られる」とか、「友達に笑われたら恥ずかしい」という気持ちが強くなり、試行錯誤をしながら学び続けることが難しくなります。これでは学習面でも伸びなくなってしまいます。

寺田さん:また非認知能力を伸ばすためには、「やってみようと思う」「やってみる」「成功する」、このようなサイクルで成功体験を積み重ねることも大切です。
この成功体験を積み重ねるためには、失敗してもつまずいても、「私でもできるかも」と自分の能力を信じ行動できる力を持つ必要があります。

――なるほど。では、非認知能力を伸ばすために保護者はどんなサポートができるでしょうか?

寺田さん:個別指導学院に通っていたある生徒の例をご紹介しながらお伝えしていきましょう。
このお子さんは小学生のころに新薬の開発をするために薬学部に行きたいという夢を抱きました。しかし、中学校・高校と進むうちに「数学が苦手だから、私には無理だ」と思うようになった。
ところが信頼する先生に「今から頑張ればできる」と説得されたり、大学に合格した先輩の話を聞いたりするうちに、「私でもできるかも」と思えるようになって挑戦することにしました。

当時は模試試験の合格可能性がE判定(合格可能性20%未満)で学校の成績もそれほどよくなかったそうです。
こんな状況ですと、世の中の多くの保護者は「あなたには無理」と言ってしまうのではないでしょうか。

でも、彼女のお母さんは「あなたが決めたんだったら応援する」と言った。無条件に受け入れてくれたんですね。
これが自己肯定感を育むコミュニケーションです。こうして彼女は東京大学に現役合格しました。

石川さん:日本の中高生は自己肯定感の低さはよく知られていて、成績で他人と比較されやすくなる中学生から下がっていくという調査結果もあります(※4)。

自己肯定感とは「ぼくっていいな」「私は私のままで大丈夫」と思える気持ちのことです。この自己肯定感を高めるには、小さいころからどれだけ無条件の愛を注がれてきたのかが影響します。

寺田さん:生まれたばかりの赤ちゃんに対する愛情は根拠なく無条件で感じるものですよね。
それが定期テストなどで他人と比較される年齢になると、つい「もっと勉強しなさい」「こんな成績では困る」なんて口に出してしまう。
否定され続けると、お子さんの自己肯定感は低くなってしまいます。

これからお子さんの力を伸ばしたいと思われるなら、ぜひ親子間の接し方を見直してみてください。

 
[参照元]
(※1) 学習指導要領「生きる力」 平成29・30年改訂  学習指導要領、解説等 改訂のポイント 学習指導要領改訂に関するスケジュール
(※2) 学習指導要領のくわしい内容:文部科学省
(※3) 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ):文部科学省 平成28年6月16日
(※4) 平成26年「青少年の体験活動等に関する実態調査」独立行政法人 国立青少年教育機関機構 

[プロフィール]

石川 満(いしかわ みつる)

東京個別指導学院 進路指導センター センター長。大学・大学院在学時に塾の講師を勤めた経験から教育の道に進む。2006年東京個別指導学院入社。以来10年以上に渡って教務を担当し、教育の情報収集・調査を続けながら、指導法の開発や講師の指導にあたっている。

寺田 拓司(てらだ ひろし)
教育業界に携わり30余年。何千人もの子どもたちや保護者に学習・進路相談を行う。現在は東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。

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