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子どもが発達障害?そのとき保護者ができることとは! ~精神科医・岩波明さんに聞く~

子どもが発達障害?そのとき保護者ができることとは! ~精神科医・岩波明さんに聞く~
近年、「発達障害」という言葉を聞く機会が多くなりました。「うちの子も発達障害かもしれない」「将来はどうなるの?」と悩む保護者の方も少なくないと思います。今回は、発達障害専門外来で診察もされている精神科医・岩波明さんに「発達障害」とはどんなものなのか、保護者はどんなサポートをすればいいのかなど、お話をうかがいました。

発達障害とは?その種類と症状

発達障害とは?その種類と症状

昨今では、発達障害という言葉を聞く機会が多くなりました。今回は発達障害に詳しい精神科医・岩波明さんにお話をうかがいたいと思います。

娘の同級生にも発達障害のお子さんがいるのですが、実際の症状などはなんとなくイメージがあるものの詳しいことがわかりません。メディアでもよく見聞きするようになりましたけれど、そもそも「発達障害」とはどんな症状なんでしょうか?

発達障害は、「生まれつき脳機能になんらかの偏りがあって、精神的あるいは行動的な特有の症状を示すもの」と定義されており、具体的には大きく3つのグループに分けられます。まず1つ目が自閉症やアスペルガー症候群と呼ばれる一群をまとめた「ASD (自閉症スペクトラム障害)」。2つ目は「ADHD(注意欠如多動性障害)」。そして3つ目は「LD (学習障害)」です。

これら3つを合わせて「発達障害」と呼んでいるんですね。

なるほど。「アスペルガー」や「ADHD」という言葉は私も聞いたことがあります。

特に一般的に広く知っていただきたいのは「ASD (自閉症スペクトラム障害)」と「ADHD(注意欠如多動性障害)」です。いろいろな統計データがありますが、ASDの有病率は人口の0.5~1%くらい、ADHDは3~5%くらいと私は考えています。

両方合わせると100人のうち3~6人ほどの方については発達障害があることになるので、意外に多い印象を受けます。

ASDとADHDは具体的にどういった症状がみられるのでしょうか?

まずADHDの症状から説明しましょう。「注意欠如多動性障害」という名前のとおり、2つの主要な症状があります。1つ目は、注意不足や集中力不足の症状です。具体的には、ケアレスミスが多い、忘れ物が多い、勉強に集中できないといったことが挙げられます。2つ目は多動性や衝動性です。多動とはいわゆる落ち着きがないことを指し、じっと座っていることが苦手、いつも手足をもじもじと動かしているといった様子が見られます。そして衝動性とは児童期などに多く見られるもので、かっとなりやすく、すぐケンカになってしまうといった症状です。

なるほど、集中力の欠如と多動性が見極めのポイントなんですね。

そうですね。さきほどお伝えしたような特徴が幼児期から持続的に認められるのがADHDです。これに対してASDは、一般に「空気が読めない」と言われるような対人関係・社会性の面で症状が現れます。対人関係が希薄なところが特徴として見られ、友だちが1人もいないという極端なケースも少なくありません。幼少期から一人遊びばかりしている、場の雰囲気がわからず1人で話し続けてしまい周囲から浮くといったことも症状の1つです。

人間関係がうまく築けないことが大きな特徴なんですね。

そのとおりです。また、ASDには「非常にこだわりが強い」という特徴もあります。こだわりの対象はさまざまですが、たとえば電車が好きなASDのお子さんの場合、電車を見にいくと何時間でもずっと見ている、抱き上げて帰ろうとすると泣きわめいて抵抗するというように、自分が興味のあることに対して非常に強いこだわりを見せます。さきほど説明したような対人関係や社会性の症状と、こだわりの症状。この2つの症状にあてはまる方がASDと診断されます。そのなかでも、特に知能の高い方が「アスペルガー症候群」と診断されるのです。

子どもの発達障害の特徴 

子どもの発達障害の特徴

中学生で発達障害がわかることもあるんですか?

もちろんあります。ADHDで知的障害を伴わない場合、不注意のミスなどは意外と自分でカバーできてしまうこともあり、小学校・中学校では大きな問題にならずに過ごしたという方も多いです。

文部科学省が公立学校の教員に対して行った発達障害の可能性がある児童についての調査(※1)では、「知的発達に遅れはないものの学習面、各行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒」は中学生全体の4%というデータもあります。医師の診断による数値ではありせんが、1クラス30~40人とすると、発達障害の傾向があるお子さんが1クラスに1人はいる計算になります。

意外と多いんですね。発達障害のあるお子さんにとって困ること、問題になることはどんなことですか?

ASDやADHDのお子さんは周囲の人間関係から孤立しやすい傾向があります。特にASDのお子さんはその傾向が強く、クラスで孤立してしまった結果、いじめに遭い、不登校やひきこもりになるというケースも少なくありません。また、興味の幅が狭いため、集中力がなく勉強が続かないので、学習面で問題が出ることもあります。

ADHDのお子さんの場合は、どんなことが問題になるのでしょう?

ADHDのお子さんの場合、中学生くらいになると「授業中に歩き回る」など、多動の症状は少なくなります。そのため、「忘れ物が多い」「提出物をきちんと出せない」といった不注意症状が目立ってしまいます。また、片づけが苦手だったり、服装に気をつかわなかったりという特徴もあるので、だらしない印象を受けることも多いです。

症状を知らないと、だらしない人というわるい印象だけが残ってしまいますね。

ほかにも、ADHDのお子さんは思春期に睡眠リズムが乱れることが多く、朝起きられないために遅刻が増えてしまいがちです。義務教育である小・中学校では遅刻が多くても卒業できますが、高校ではそうもいきません。遅刻が重なったことで、高校を退学になってしまった例もあります。

最近は「大人のADHD」と話題になることも多いですね。

こうした発達障害は児童期から思春期だけの問題で、大人になるとあまり目立たなくなると考えられてきました。しかし、研究により成人になっても症状が持続するということがわかってきています。

大人の場合、どのようなことが問題になるのでしょうか。

やはり職場や仕事への不適応ですね。たとえば、有名大学を卒業している方でも、職場での対人関係がうまくいかない、業績が上がらないといった問題が出てきてしまい受診されるケースも増えています。

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子どもが「発達障害かも」と感じたら、どうするべき? 

子どもが「発達障害かも」と感じたら、どうするべき?

発達障害かどうかを判断するために参考になるチェックリストのようなものはありますか?

ASDについては「AQ(自閉症スペクトラム指数)」(※2)というものがよく使われます。

それは、どのようなものなんでしょうか。

さきほど説明したような「孤立してしまう」などの、特徴的な症状に対する50項目の質問に解答する形式のテストです。私どもの病院のデータでは、健常者の方が50点中15~16点なのに対し、ASDの方は35点以上、ADHDの方は30点弱くらいになることが多いです。ほかにも、ADHDの診断では「自己記入式症状チェックリスト(ASRS-ver1.1)」(※3)などを使用します。これらのチェックリストについてはインターネットでも詳しい内容が見られるため、ご家庭でも参考にしやすいと思います。

自分の子どもが「発達障害かもしれない」と感じたときは、どんなところに相談すればいいですか?

お子さんの年齢にもよりますが、中学生のお子さんでしたらまずは学校のスクールカウンセラーや児童相談所に相談するとよいでしょう。専門の医療機関などを紹介してもらうことができます。また、最近では各都道府県や市町村で発達障害の支援センターを増やす取り組みがなされていますので、そういった施設に相談するのもよいと思います。

病院に相談したい場合は、どのような診療科に行けばいいのかしら。

中学生のお子さんの場合ですと、年齢的に受診する科に悩まれる保護者の方が多いかもしれません。まず候補に挙げられるのは、小児科で精神疾患や発達障害を扱っている医師がいる病院や、児童精神科です。私どもの病院には児童精神科という科はありませんが、発達障害専門外来で中学生の診察も行っています。このように、一般の精神科でも対応が可能な場合もありますので、受診の前に相談してみてください。

わかりました。病院ではどのような診察が行われているのでしょうか?

病院では、幼児期から現在に至るまでの症状や経過、問題行動などをていねいにくり返し聞き取ることから始めます。もちろんさきほどのAQや知能検査なども参考にしますが、「この検査を行えば絶対に診断がつく」というものではありませんので、この聞き取りが診断の判断基準になります。

発達障害については「治るものなのか」と不安や疑問をもつ方も多いと思います。実際にどのような治療が行われるのか教えていただけますか。

「発達障害の症状」は、固有の特性でもあります。「どういった症状があり、どのような問題が存在するか」をきちんと認識することが治療の出発点になります。そのためには、本人や家族に「発達障害」について理解していただくことが重要です。自分が抱えている問題が発達障害によるものだと認識できたことで、自分が不自由に感じる問題にもうまく対応できるようになったケースも珍しくありません。

「人とは違うかも」「生きづらい」と感じていた原因が発達障害とわかって納得できればこそ、苦手なところをうまく回避する工夫ができるというものですね。

そうなんです。実際、診断を受けて「ほっとした」と言う方も多いです。まず自分の問題を把握し、次にその対応策を考えていくことで、症状の改善を図っていくのが発達障害の主な治療になります。そのほかにも、具体的な治療として投薬治療があります。注意集中力を上げたり、衝動性を抑えたりする薬を飲むことで症状の改善がみられるケースが非常に多いです。

効果があるとわかっていても、投薬治療に抵抗がある保護者の方が多いのではないでしょうか?

そうですね。精神科の処方薬と聞くと抵抗がある方も多いです。しかし、投薬と言っても依存性の強いものや永続的なものではありませんのでご安心ください。また、多くの場合、処方するのは小児科でも使われる薬ですし、カウンセリングと併せて上手に活用していただければ高い効果が期待できます。学校の定期テストや受験の期間だけ薬を利用するなど、必要に応じた投薬による治療にも耳を傾けていただければ幸いです。

発達障害でも進学できる?家庭でできることとは 

発達障害でも進学できる?家庭でできることとは

病院に相談した場合、専門的な治療が受けられる一方で、自分のお子さんに「障害」と診断がつくことに抵抗感がある保護者の方も多いかもしれませんね。

岩波さんは、病院で「発達障害」の診察を受けるメリットはどういったところにあると思いますか?

たとえば、お子さんの問題が発達障害によるものだと保護者の方が気づいていないと、「なんてだらしないんだ」「どうしてこんなこともできないんだ」と、ネガティブな言葉でむやみに叱ってしまうことが多くなってしまいます。そうなると、家庭の雰囲気も険悪になってしまいますよね。専門家の話を聞いて、お子さんの障害を保護者の方がきちんと認識することで、こうしたすれちがいが解消できるということが、診察を受ける上での大きなメリットではないでしょうか。

確かに、原因がわかれば解決できる問題も多そうですね。とは言え、保護者としては原因が発達障害だとわかったことへの安心よりも、お子さんの進学や就職など将来についての不安のほうが大きいかもしれません。

仮にお子さんが発達障害と診断されても悲観する必要はまったくありません。ASDやADHDの症状は学校の成績に直接影響するものではありませんし、実際に有名大学を卒業している方や、医師や弁護士として働いている方も大勢いらっしゃいます。

「不登校のために高校は退学になってしまったけれど、高認(高等学校卒業程度認定試験)を取って大学に進学した」という方も少なくありません。

今は症状によって集中力が続かずに学習に支障がある場合でも、さきほど言ったような薬を使うことで改善することもできるので、保護者の方は症状を理解し、お子さんにしっかり向き合ってあげてください。

わかりました。進学についてはそれほど心配することはないんですね。

はい、そのとおりです。お子さんの得意・不得意を見極めていくことが、発達障害を理解する上で重要になってきます。発達障害は個性とも言える特有の症状が幼児期から持続するものですから、一般的な病気とは違うイメージとしてとらえてみてください。

お子さんの得手・不得手を見極めるというのは、まさに保護者がサポートすべきことだと思います。ほかにも保護者が発達障害のお子さんにできるサポートはありますか?

保護者の方には、発達障害について理解を深めていただきたいと思います。今は発達障害についてのいろいろな情報を本やインターネットから集めることができますので、ご自身で調べてみるのがいいと思います。また、お子さんが中学生くらいでしたら、生活面でも保護者の方のサポートは必要になるでしょう。たとえば、物をよく失くしてしまうお子さんの場合は物の置き場を決めてあげたり、遅刻が多いお子さんなら朝のスケジュールを立ててあげたり、そういったことを1つ1つ重ねていくことでお子さんも生活しやすくなると思います。もちろん、短期間のうちにすべてのことが改善されたり、解決されたりするわけではありませんので、基本的なことからすこしずつ、気長にやっていくことが大切です。

もしお子さんが発達障害とわかっても、悲観したりむやみに心配し過ぎる必要はないのかもしれませんね。お話を聞いて、今起きている問題はどんなものなのか、どうやって対応していくかを考えていくことが大切だと感じました。 

そうですね。発達障害があるとわかっても、お子さん1人ひとりに得意なことがあるはずです。保護者の方はお子さんの得意なこと、よいところを伸ばしてあげるという姿勢で向き合ってあげてください。

■参照
(※1) 通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児 童生徒に関する調査結果について(平成24年12月5日 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/
__icsFiles/afieldfile/
2012/12/10/1328729_01.pdf
(※2)「J-STAGE」自閉症スペクトラム指数(AQ)児童用・日本語版の標準化――高機能自閉症・アスペルガー障害児と定型発達児による検討――
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/77/6/77_6_534/_pdf
(※3)自己記入式症状チェックリスト(ASRS-ver1.1)
https://www.adhd.co.jp/doctors_lib/pdf/asrs_checklist.pdf

岩波明(いわなみあきら)
岩波 明 (いわなみ あきら)
1959年神奈川県生まれ。1985年、東京大学医学部医学科卒。医学博士、精神保健指定医。都立松沢病院、東京大学附属病院精神科、埼玉医科大学精神科などを経て、2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授に。2015年より昭和大学附属烏山病院院長を兼任し、ADHD専門外来を担当。精神疾患の認知機能、司法精神医療、発達障害の臨床研究などを主な研究分野としている。『心の病が職場を潰す』(新潮新書)、『大人のADHD もっとも身近な発達障害』(ちくま新書)、など、著書多数。